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第109回 「ECFA型」模造品貿易


ニュース 法律 作成日:2012年3月28日_記事番号:T00036206

産業時事の法律講座

第109回 「ECFA型」模造品貿易

  最近、台湾で発注した模造品を中国から直接台湾の消費者に向けて出荷するという、新たな模造品販売システムが誕生したようです。同システムでは、中国の出品者が台湾人の名義で登録している台湾のオークションサイトに模造品を出品し、入札を待ちます。落札者が出品者の指定する台湾の銀行口座に入金を行うと、商品が中国から直接、宅配便で落札者の住所に届けられるというものです。まさに「ECFA型」とでも呼ぶのにふさわしい模造品貿易システムです。

 士林地方法院での案件記録によると、台湾の著名オークションサイト「露天拍売」に出品されていた任天堂DSの模造品を被告が落札、購入したところ、落札物件が中国から直接送られてきました。これに対し警察が捜査を進めましたが、模造品の出品者が台湾ではなく中国在住だったため、台湾の裁判所は捜査令状を発行しませんでした。結局、警察は被告宅を家宅捜索できず、落札した模造品を証拠として検察に送致するにとどまりました。

模造品販売幇助で起訴

 被告が検察の取り調べを受けた際、▽自分はオークションサイトのアカウントを中国の友人に貸しただけ▽中国の友人が何を出品しているのかについては関与していない▽そもそもその友人に会ったことすらない▽落札者からの入金は被告の銀行口座に振り込まれたが、その後被告は別の台湾人の口座に振り込んだ──などと供述しました。検察はこの供述から、被告を模造品販売幇助の罪で起訴しました。

 案件の公判段階で、検察官は、被告が模造品販売にかかわっていたかどうかを証明するのは困難と判断、原告と被告に和解を勧告しました。その後和解が成立、被告は罪を認めた上で、原告に賠償金を支払うことで、執行猶予付き禁固4月の判決を受けました。

 判決後、警察は、ある台湾人が多数のアカウントを利用して模造品を販売していることを突き止めました。警察は捜査のため、これら複数のアカウントで模造品を入札した結果、落札した製品はすべて中国から送られてきました。捜査の結果、アカウントはすべて同一人物のものであることが判明しましたが、前回同様、裁判所が捜査令状を発行しなかったため、警察は落札した証拠を送検するにとどまりました。

「お手上げ」状態の検察

 こうした案件のように、模造品が中国から台湾の配送業者に送られた後、台湾の配送業者によって直接、落札者の手元に届けられるケースに対して、台湾の検察はアカウント登録者を幇助犯として起訴する以外、ほとんど「お手上げ」であるのが現状です。

 読者の皆さんもご存じのように、世界一の模造品生産国である中国との間では、これまでも模造品を大量に輸入した後に台湾の販売経路を利用して販売するというような販売方法や、ある程度まとまった注文を受けた後に中国へ仕入れに行って持ち帰るといったような模造品の販売方法がありました。しかし、そうした方法はいずれも、警察、税関などに対するリスクが低くありませんでした。

 しかし、今回発見されたこの手法は、模造品が中国から直接台湾の落札者あてに個人輸入されるため、落札が行われたオークションサイトのアカウントの所有者が「幇助犯」としての軽い処罰を受けるのみにとどまります。中国にいる本当の「出品者」に対しては何ら調査が行われることはありません。

 今後、このような「ECFA型」の手口によって台湾に「個人輸入」されるものは、模造品だけではなく、麻薬などの禁制品も含まれるようになるでしょう。また最終的な販売先(発送先)も台湾だけではなく、その他の国々にも広まっていくかもしれません。

 もし台湾の司法体制が、真犯人に法の網を掛けられない現状を放置すれば、近い将来、台湾は中国の模造品、禁制品を世界中に発送するための中継基地となってしまうことでしょう。

徐宏昇弁護士事務所

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