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第114回 「非伝統商標」の申請方法


ニュース 法律 作成日:2012年6月6日_記事番号:T00037518

産業時事の法律講座

第114回 「非伝統商標」の申請方法

 本コラム第112回「動態商標とホログラム商標の申請http://www.ys-consulting.com.tw/news/36984.html」では、顔色商標および声音商標、立体商標、動態商標の意味とその申請方法を紹介しました。近年やっと各国の商標権に採用され始めたこれら新しい商標は、これまでの文字および読み方、意味、色またはその組み合わせによって、商品やサービスの提供者を代表させる商標とは全く違うもののため「非伝統商標」と呼ばれます。

「非伝統商標審査基準」と申請方法

 2011年12月に公布された新商標法は、今年7月1日より施行されることになっていますが、新法の施行に伴い、経済部は5月31日に「非伝統商標審査基準」を公布、新法と同日、7月1日より施行することとしました。この審査基準では、第112回のコラムで紹介した4種類の新しい形の商標の登録要件を規定しているほか、新法の中では特別に分類はされていない、「位置商標」および「気味商標(におい商標)」「触覚商標」「味覚商標」などの視覚によって感知することができない非伝統商標を「其他非伝統商標(その他)」として区分けし、原則的な審査基準を設け、その申請を可能としています。

 「位置商標」とは、平面文字・図形商標または色商標、立体商標を、商品またはサービスの特定の位置に使用することで、その「特定の位置」が商標を識別するための重要な特徴となり、もしほかの位置に標示されていたのでは、商品またはサービスの提供者を代表できない可能性があるものです。例えばプラダのスニーカーなどのかかと中央部分にある赤い帯状のラインを想像してもらえれば理解しやすいと思います。

 位置商標申請の際には、破線で商標を商品またはサービスのどの位置に使用するのかを示した上で、商標そのものの使用方法、位置の詳細などの説明を行わなければなりません。審査基準では前述のプラダの赤い帯状のラインについて、「本件位置商標は、靴のかかと中央部分から靴底まで続く赤い帯状のラインで構成されている。破線部分は靴の形状を表し、本商標の一部を構成するものではない」と表現しています。

 一方で審査基準は、におい、触覚、味覚など、視覚によって感知することができない商標については、「明瞭かつ明確、完全、客観、持久性があり、理解しやすい」方式によってそれを表現し、必要時には文字による説明のほか、商標見本による補足を行うことができると規定しています。

 知的財産局はこれまで実際ににおい、触覚、味覚などの商標を審査したことがありません。そのため、どのように説明し、どのような商標見本を提供するべきかについては、審査基準の中には具体的な規定がなされておらず、かなりの程度の保留が見られます。将来実際に案件を受理し、その案件を処理する中で、どの商標の審査基準を「準用」するかを決める狙いなのでしょう。

「標示性」の重要性

 さて、第112回でも書きましたが、非伝統商標は一概に「標示性」が低いのが特徴です。それはにおい商標などについても例外ではなく、例えば花の香りを香水に、ハーブの香りを調味料またはお茶に商標として使用することを指定した場合、商品との直接的な関連性が強すぎることから、商標は認められないでしょう。また、それらの香りをほかのにおいを隠すため、または嗅覚(きゅうかく)を刺激するためなどの商品に商標として使用することを指定した場合は、「効能性」のみが重視されているとして、同様に商標としては認められないでしょう。

 このほかにも、前述の審査基準は非伝統商標同士、または伝統商標と非伝統商標を形式上組み合わせることで「聯合式」の商標を構成できると規定しています。例えば動画と音楽の組み合わせなどがそれに当たりますが、このような商標が申請された場合、各商標形態の内容に分けて個別に審査が行われた後に、それらを組み合わせた全体に対して、標示性の有無、効能性のみに偏っていないかなどが審査されます。

 さらに審査基準は、登録を申請した商標そのものに標示性がない場合、申請者は当該商標が長期的かつ広範囲における使用により、消費者に「権利者の商標」として認識された、つまり標示性があることを証明すれば登録が認められることも示しています。

 これらから分かることは、台湾の新商標法は、非伝統商標に対して積極的に開放路線を貫いているということです。新しい商標をどのように審査するかについては、今後実際に審査を行い、経験を積んだ上で具体的な審査基準を作り上げていくつもりなのでしょう。このような方式は、確かに申請者に創意工夫を凝らした商標形式の登録を申請させる結果を生むでしょう。しかしそれは申請者が実験台にされていることにほかならないのです。

 非伝統商標の申請を考えている企業は、知的財産局が一定程度の経験を積むまでは申請を焦らず、まずは商標を、より集中的かつ広範囲に使用し続け、商標の標示性を高めることに務めることが大切です。 

徐宏昇弁護士事務所

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