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第116回 違法コピーCD−ROM販売の民事賠償


ニュース 法律 作成日:2012年7月11日_記事番号:T00038179

産業時事の法律講座

第116回 違法コピーCD−ROM販売の民事賠償

 内政部警政署刑事警察局は2008年6月5日、台湾で過去最大規模の違法コピーCD−ROM販売サイト「軟体備份站」を摘発し、違法コピーされた映画CD−ROM192枚、ゲームCD−ROM7,872枚、アダルトCD−ROM3万4,068枚とCD−ROM書き込み機171台を押収しました。

 当該サイトは中国に設置されていましたが、台湾にコピー工場3カ所と多数の加盟サイトを設け、各加盟サイトが独立して販売を行っていました。主犯の郭容疑者は06年6月30日に別件で逮捕され、07年から服役していましたが、郭容疑者の服役後は姉が経営を引き継ぎ、加盟サイト方式で営業を続けることで、郭容疑者逮捕以前と変わらない販売規模を保っていました。そのため、今回再び警察の捜査の手が入ることとなり、台北市警察局と彰化県警察局も複数の加盟サイトを摘発しました。

 郭容疑者は中国に逃亡したため、裁判所は判決を下すことができません。そのため、検察官の起訴を受けた知的財産裁判所は12年4月25日の判決で、郭容疑者以外の被告に対して1年から2年の有期刑を言い渡しました。

マイクロソフトが賠償請求

 マイクロソフトは摘発された違法CD−ROMのうち、Xbox用ゲームCD−ROM949枚、およびXbox360用ゲームCD−ROM416枚に関して、郭容疑者以外の被告に対して、以下のような内容の民事賠償の請求を行いました。

1)前述のXboxおよびXbox360用の違法コピーCD−ROMのうち、ゲームの著作権がマイクロソフトに帰属している48種類について、ゲーム1種当たり100万台湾元、計4,800万元。

2)前述のXboxおよびXbox360用の違法コピーCD−ROMのうち、ゲームの著作権がマイクロソフトに帰属していないCD−ROMで、マイクロソフトが著作権を持つXbox開発キットまたはXbox360開発キットが違法にコピーされているものについて、開発キット各種当たり500万元、計1,000万元。

3)違法コピーCD−ROMが侵害したXboxなどのマイクロソフトの商標権侵害について、CD−ROM1枚当たり1,120元、計168万元。

4)被告が違法コピー商品を販売したことで、マイクロソフトの「のれん(goodwill)」を汚したことについて、100万元。

5)台湾の大手新聞「経済日報」の一面への謝罪文掲載。

 このような請求に対して、台北地方裁判所は11年12月30日、以下のような判決を下しました。

A)被告がマイクロソフトの著作権を侵害した部分について(前述1、2)、連帯で500万元。

B)被告がマイクロソフトの商標権を侵害した部分について(前述3)、連帯で50万元。

C)被告がマイクロソフトの「のれん」を汚したことについて(前述4)、連帯で100万元。

D)被告は「経済日報」一面に謝罪文を1日掲載すること(前述5)。

 これに対し被告らは賠償金額が高すぎるとして知的財産裁判所に告訴しました。それに対して知的財産裁判所は12年4月25日に以下のような判決を下しました。

ア)著作権侵害について(前述A):マイクロソフトがゲーム48種と開発キット2種の著作権を侵害されたことについて、1種当たり10万元、計500万元。1種当たり10万元の賠償額は、侵害期間、違法コピー数、著作権数量、侵害状況、マイクロソフトの被った損害などを総合的に斟酌(しんしゃく)したもの。

イ)商標権侵害について(前述B):著作権侵害について判断された賠償金額には、マイクロソフトの商標が侵害されたことについての賠償も含まれ、重複して賠償を請求することはできないため、本部分についての請求は棄却。本部分について、マイクロソフトが計算した賠償金額は168万元であるが、既に認められている賠償額はその3倍以上となっている。

ウ)のれん侵害について(前述C):双方の資金力、のれん侵害の程度、侵害期間、地域的要素などの要素を考慮すると100万元という賠償額は適法である。

エ)謝罪文掲載について(前述D):「経済日報」その一面に謝罪文を1日掲載することの判断は適法である。

 本案は今後最高裁判所への上告が可能ですが、知的財産裁判所が本判決中で示した「ゲームへの著作権侵害1種当たり10万元」および「商標権侵害についての賠償は、著作権侵害の賠償の中に含めることが可能」という認定は、最高裁判所の支持を受けることができれば、今後このような案件が損害賠償を請求する際の判決の参考となるでしょう。 

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