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第118回 特許権利金免税の要件


ニュース 法律 作成日:2012年8月8日_記事番号:T00038667

産業時事の法律講座

第118回 特許権利金免税の要件

 台湾の所得税法には、「権利金免税」と呼ばれている規定があります。この規定は、台湾企業が海外企業の所有する特許権または商標権、専門技術に対して支払う権利金は、台湾政府の許可を得ることによって所得税の支払いが免除されるというものです。

 しかし、すべての権利金が免税になるわけではありません。所得税法の規定によると、「新しい生産技術または製品の採用、または製品品質の改良、生産コストの抑制」のために海外企業の特許権または商標権、専門技術を使用するなどの場合に前述の許可を得ることができます。

 先日、台湾の最高行政裁判所がある権利金免税案について、特許技術を利用している製品がその「生産および製造・処理過程が中華民国で行われていない」ため、特許権利者が受け取った権利金は前述の免税の条件を満たしていないと判断しました。

エイサー、台湾以外で生産

 台湾のパソコン大手メーカー、宏碁(エイサー)は2003年に米国のIBMと「パーソナルデータ処理システム」に関する特許ライセンス契約を締結し、IBMより特許ライセンスを受けていました。しかし04年12月、香港に本社を置く聯想集団(レノボ)がIBMのPC部門を買収したため、IBMが所有していた特許権と特許ライセンス契約はレノボに引き継がれ、ライセンス契約に関する権利金はレノボに対して支払われることになりました。

 08年8月、エイサーは当該年度分の権利金、計3億1,762万5,000台湾元をレノボに対して支払う際、所得税20%、計6,352万5,000元を控除しました。09年、レノボは権利金は免税を理由に所得税の還付を申請しました。

 これに対し台北市国税局は、エイサーはレノボから受けたライセンスを自ら使用しておらず、また当該ライセンスを使用させている加工下請け業者の工場も台湾ではなく中国で「パーソナルデータ処理システム」を製造していることから、免税の要件を満たさないと判断、10年3月に所得税還付の申請を棄却しました。しかしレノボはこの判断を不服とし、訴願と行政訴訟を提起しましたが同様に棄却されたため、最高行政裁判所に上告したのが今回の案件です。

免税の目的は台湾の発展

 12年1月、最高行政裁判所は以下の理由からレノボの上告を棄却する判決を下しました。

・所得税法が知的財産権を輸入する海外企業に対して免税処置を設けているのは、生産力のある情報や製品を台湾に持ち込むことで、台湾の産業の競争力を高め、経済発展を促進させることを目的としている。

・免税処置の目的が台湾の経済効果にあるなら、当該経済効果もまた台湾内に留まる必要がある。そうでなければ免税処置を取る必要はない。

・もし、持ち込まれた特許権または商標権、各種特許関連権利、技術サービスの報酬について、台湾外で生産・製造された部分の営利事業に対しても免税処置が取られるとすると、台湾の税収を用いて海外の経済発展補助を行うという不合理な現象が発生することになる。

・したがって、所得税法の想定する対象および範囲は、台湾内における生産設備、製造、製品設計などの専門技術に限られると解釈される。

 このため、最高行政裁判所は、エイサーがレノボから受けたライセンスを自ら使用しておらず、また当該技術を利用した製品が台湾で販売されていないことから、免税の要件を満たさないと判断しました。

 PCに限らず、多くの台湾企業の製品は、中国などの地で生産された後、台湾を通らずに直接海外に販売されていきます。このような製品に利用されている海外企業のライセンスに関する権利金は、免税としての還付を受けられない可能性があるわけです。 

徐宏昇弁護士事務所

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