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第122回 仮執行についての一考


ニュース 法律 作成日:2012年10月24日_記事番号:T00040073

産業時事の法律講座

第122回 仮執行についての一考

 台灣の民事判決では、敗訴した当事者が上訴しない、または上訴ができなくなることで、判決が「確定」して初めて強制執行が可能になります。しかし、勝訴から確定までの時間が長いため、民事訴訟法は、原告が勝訴を勝ち取った後に「假執行(仮執行)」を申請することを認めています。

台湾での仮執行

 ご存知の通り、假執行は日本語では仮執行、つまり一時的な執行を意味しています。中国語では「假」=「ニセ」という漢字を使っていますが、その実は執行です。勝訴側は、仮執行の許可を得た後、裁判所の「執行処」に対して強制執行を申請し、敗訴側財産の差し押さえや競売をし、勝訴した金額を得ることで、判決の内容を現実化することができます。

 通常、原告が勝訴後の早い時期に執行を行いたい場合は、最後の口頭弁論期日以前に仮執行を申請する必要がありますが、以下の場合には、裁判所は当該部分について自主的に仮執行を宣告しなければなりません。

1)被告が法廷において一定金額の支払いを認めた場合

2)被告に扶養義務の履行を命じる判決を下す場合

3)簡易訴訟プロセスにおける判決の場合(簡易訴訟適用案件:請求金額50万台湾元以下、賃貸金、借款、短期雇用、手形、合会(講)およびこれらの保証に関する案件)

4)勝訴金額が50万元以下の判決の場合

 民事訴訟法の規定では、原告が判決確定後に強制執行を希望する場合、「債務の返済が困難、または損害の計算が困難」であることを説明、証明できれば、裁判所は仮執行を宣告することができますが、ほとんどの場合、裁判所は原告が担保の提供を承認した後、つまり、「原告が担保金を提供する」という条件付きで仮執行を宣告します。この場合の担保金は、通常は勝訴金額の3分の1です。

被告側の「反担保」

 一方、被告もこれと同様に、裁判所が仮執行を許可した場合、「回復不可能な被害」を受けることを説明、証明することで、裁判所に自主的に仮執行の宣告をさせない、または原告の仮執行の申請を許可させないことができます。裁判所は通常、仮執行を宣告する際に、被告が「反担保」を提供すれば仮執行を免れることができる旨を宣告しますが、この反担保は、敗訴金額の全額である場合がほとんどです。

 原告の提供した担保金は、将来判決の内容に変更があり、原告が被告に対して一定金額の返却を行わなければならなくなった際に、担保金の中から返却を受けるためのものです。同様に、被告の提供する担保金(反担保)は、原告の勝訴確定時のためのものです。

仮執行制度の現在

 このような仮執行制度は、長年の施行の結果、通常は以下のような使われ方をしています。

1)原告が裁判提起と同時に仮執行を申請する。

2)裁判所は、原告の勝訴判決を宣告する際に、「原告が担保を提供することを条件に仮執行を行うこと」「被告が反担保を提供すれば仮執行を行わないこと」を同時に宣告する。

3)原告は、担保を希望せず、また煩雑なプロセスを経て仮執行を行っても、それにより将来の判決内容に影響を与えてしまうため、仮執行を行わない。

4)原告が仮執行を行わないので、被告は安心して時間稼ぎのための控訴を行う。通常、控訴審の審理期間は、一審のそれよりも長い。

 とはいえ、もし原告が、資金力の豊富な被告に対して仮執行を行おうとする場合、通常の被告は反担保を提供します。つまり原告からすれば、これで勝訴確定後の保証がされたわけですし、それをしない場合でも、実際に仮執行を行うことで被告に返済能力があるのかどうか、すべてが明らかになるわけです。つまり、原告の資金に担保を提供するだけの余裕があるのであれば、仮執行は考慮してみる価値があります。

 もちろん、担保を必要としない仮執行については、判決を受け取った後、直ちにその執行を申請すべきことは言うまでもありません。

徐宏昇弁護士事務所

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