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第119回 新タイプのドメイン名と紛争処理


ニュース 法律 作成日:2012年8月22日_記事番号:T00038939

産業時事の法律講座

第119回 新タイプのドメイン名と紛争処理

 インターネットが流行しだした当時、いわゆる「ドメイン名の先取り」などドメイン名に関するトラブルが多発しました。数多くの大企業の名称、商標、ブランド名が世界各地で第三者のドメイン名として登録、悪用され、多くの消費者が騙され、また多くの紛争が発生しました。

 一方、他者の著名な商標や、ブランド名などをドメイン名として先取り登録したドメイン名登録者が、ドメイン名を使用せず、商標権などを持つ企業などがドメイン名を高額で購入するのを待つといった行為が横行し、商標権利者に多大な損害を与えるといったこともよくありました。

 このような問題を解決するため、各国のドメイン名管理団体は、いわゆる「裁判外紛争解決手続(ADR)」を制定し、仲裁手続に似た簡単な方法で、ドメイン名登録者と商標権者の間の紛争を解決してきました。これにより、紛争当事者は裁判所の手続きによることなく問題を解決することができ、また十数年間の判例が累積され、ドメイン名の先取りといった行為が下火に向かいました。

汎用ドメインの無料提供

 しかし、ドメイン名登録制度は新しい局面を迎えました。その原因は数年前に採用された汎用ドメイン名にあります。

 汎用ドメイン名とは、筆者の事務所で登録しているドメイン名「hiteklaw.tw」のように、ドメイン名「hiteklaw」と国別コード「tw」の間にcomやidvなどの屬性名稱がない形のドメイン名のことです。この場合、「tw」はトップレベルドメイン、「hiteklaw」はセカンドレベルドメイン、さらにその前に付くドメイン名はサードレベルドメインという名称で呼ばれます。

 さて、このようなドメイン名を登録者のみが自ら使用していれば何も問題はなかったのですが、一部の業者が「サードレベルドメインの無料提供サービス」、つまり、まずセカンドレベルドメインを申請・登録し、そのドメイン名にサードレベルドメインを付けたものを顧客に提供するサービスを始めたことが問題となりました。

 前述のサービスをもう少し分かりやすく説明すると、例えば、セカンドレベルドメイン「roc」の汎用ドメイン「roc.tw」(このドメイン名は登録が保留されているドメイン名のため実際の登録はできません)を登録した業者が、何らかのサービスを購入した顧客に対して無料で、「xxxx.roc.tw」というドメイン名を提供するというものです。

ADR紛争処理の対象外

 このようなドメイン名は、「roc.tw」のドメイン名の下に置いてあるだけで、TWNIC(日本のJPNICに相当するドメイン名管理団体)への登録もされていませんが、普通のドメイン名とほとんど同じように使用することができます。

 このようなサービスのメリットには、より多くのドメイン名が利用可能となるということがあります。例えば、ABCという会社がドメイン名を登録する際、abc.com.twまたはabc.twといったドメイン名がすでに他者に登録されているため同名のドメイン名が使用できないといった場合、前述のサービスを利用することで、「roc.tw」の下に「abc.roc.tw」というドメイン名を持つことができるわけです。

 一方、デメリットとしては、このようなサービスを利用することで、容易に他社の商標、企業名などを自らのドメイン名として所有することができることがあります。例えば前述の例でいえば「hermes.roc.tw」(エルメス)、「samsung.roc.tw」(サムスン)などです。

 このような「事実上のドメイン名」がTWNICに登録されたドメイン名と異なる点は、「TWNIC行政規章」の拘束を受けないため、前述のADRによる紛争処理ができないことにあります。ですから、もし商標権利者などの権利が侵害された場合、権利者は知的財産裁判所に民事訴訟を提起するか、詐欺または商標侵害に関する証拠を集めた上で、検察官に対して告訴を行うことしかできません。

 TWNICの規定は、汎用ドメイン名の登録者が「代金を直接受け取ってサードレベルドメイン名を登録する行為」を禁止していますが、何らかのサービスを購入した顧客に対して無料で提供する前述のドメイン名は果たして「代金を受け取って~」に当たるのでしょうか?また、もし該当するのであれば、どのようにそれを禁止、制限すればいいのでしょう?これらについての結論は今のところ出ていません。逆に、多くの中小企業にとっては、無料で本当のドメイン名とほぼ同様のドメイン名を手に入れることができる魅力があるため、禁止するのは難しいでしょう。

 TWNICはこの問題の重大さに気付き、解決方法を研究している最中です。しかし、TWNICの方針が決まり、各界がそれを受け入れるまでの間、ドメイン名に関する問題は間違いなく起こり続けるでしょう。 

徐宏昇弁護士事務所

TEL:02-2393-5620 
FAX:02-2321-3280
MAIL:hubert@hiteklaw.tw

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