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第115回 ISPの著作権侵害の責任


ニュース 法律 作成日:2012年6月27日_記事番号:T00037908

産業時事の法律講座

第115回 ISPの著作権侵害の責任

 インターネットはとても便利なものですが、同時に多くの著作権侵害がインターネットを通じて行われています。著作権者と著作権団体は権利を守るため、インターネット・サービス・プロバイダー(Internet Service Providers、ISP)を相手取り多くの訴訟を提起し、ISPがその使用者、顧客の著作権侵害行為に対して責任を取るよう要求してきました。一方、ISPは積極的にロビー活動を行い、立法機関に対し、著作権法にISPの免責条項を設けるよう要求してきました。その結果、各国・地域の著作権法にはISP関連条項が設けられることとなりました。台灣の著作権法も例外ではなく、2009年の改正時にISPの免責条項が設けられました。

ISPの分類

 台灣の著作権法はISPを以下の4種類に分類しています。

1.コネクション・サービス・プロバイダー
データ通信や受発信を行うISP。一般にISPとはこの種のサービス・プロバイダを指す。

2.キャッシング・サービス・プロバイダー
グーグルのキャッシュサービスや、プロキシサーバーなど、使用者の要求に応じてデータ通信を行った後に、データを暫定的にキャッシュし、使用者に提供するISP。

3.インフォメーション・ストレージ・サービス・プロバイダー
ブログサービスなど、使用者の要求に応じて、データのストレージを行うISP。

4.サーチ・サービス・プロバイダー
グーグルなど、使用者の要求に応じてインターネット上のデータのインデックス・リンクなどの検索、連結サービスを行うISP。

 これらのISPが、そのサービス利用者の、第三者に対する著作権侵害行為に対して責任を負うかどうかについては、ISPのその侵害行為に対する故意、過失、または幇助の有無などを判断しなければなりません。

ISPに特別規定

 しかし、著作権法はISPの責任を軽減するための特別規定を設け、ISPが下記1〜4を実施、または5〜7を証明することができた場合は免責としました。

1.著作権保護の対策を制定し、確実に行なっている。例えば、ISPが著作権者より受け取った著作権侵害通知を著作権者が指名した侵害者に対して転送する場合は、著作権保護の対策が採られていると見なす。

2.ホームページまたはメールなどの方法で使用者に対して、著作権侵害の事実が3回あった場合は、サービスの全部または一部を終了すると告知している。

3.著作権侵害の通知文書の受け取り・連絡の窓口を設け、その情報をホームページに公表している。

4.著作権者によって制定され、政府の認定を受けた著作権の認識、保護の技術的措置を確実に行なっている。

5.行われたデータ通信、保存などのサービスはコンピューター設備がその使用者の要求を実行した結果であり、ISPは侵害行為の内容を知り得なかった。

6.使用者の侵害行為から直接的な利益を得ていない。

7.著作権者から著作権侵害の通知を受けた後、著作権侵害の内容またはデータを直ちに除去、または他者によるデータアクセスを制限した。

 著作権者がその権利侵害に気付いた場合、ISPに対して、著作権侵害の事実を指摘し、著作権侵害の内容、データを直ちに除去、または他者によるデータアクセスを制限するよう要求することができます。

 一方、ISPは著作権者より権利侵害の事実指摘を受けた場合、著作権侵害の内容、データを直ちに除去、または他者によるデータアクセスを制限しなければなりません。

 またISPの使用者は、権利を侵害していない事実を挙げ、著作権を侵害していないことを証明してISPにデータ内容の回復とアクセス制限解除を求めることができます。ただし、著作権者が10営業日以内に訴訟を提起したことを証明する書類を提出した場合、ISPはデータ内容の回復とアクセス制限の解除を行うことができません。

中国などに問題移行

 このような規定は、ISPが著作権侵害の争いに巻き込まれないようにする一方、著作権侵害問題が迅速に解決するよう制定されたものです。もし著作権者とISPの使用者の間で争議となった場合、司法によって解決を図ることができます。皆さんがインターネット上で著作権が侵害されていることに気付いた場合、上記の方法で侵害事実を通知すれば、迅速に侵害を止めさせることができます。

 主要な国・地域でこのような規定が設けられはじめた後、インターネット上での著作権侵害の多くは規定を設けていない国・地域へと移行していきました。映画、ゲーム、ソフトウエアなどの著作権侵害が中国にホームページを設置し、販売、ダウンロードサービスを提供しているのがいい例です。

 これらの国・地域が短期間に前述のような制度を設けることはないでしょう。そんな中、どのように国・地域の境界を超えて著作権侵害を取り締まればいいのか?各国・地域の司法機関は大きな課題に直面しています。 

徐宏昇弁護士事務所

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