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第107回 新商標法 税関での差し押さえ


ニュース 法律 作成日:2012年2月22日_記事番号:T00035549

産業時事の法律講座

第107回 新商標法 税関での差し押さえ

 以前は税関が模造品を差し押さえた際、守秘義務を理由に、輸入した者の情報や案件の進捗(しんちょく)状況を明かさないことが、知的財産権の商標権者(以下「権利者」)にとって大きな問題でした。

 税関は司法警察ではないので、商標法、著作権法に関する案件を調査する権利がなく、案件を「航空警察」「港務警察」「知的財産警察」に送致します。権利者は案件が検察に送られるまでの間、警察の調査に協力することも「下請け」や「発注者」の調査を求めることもできませんでした。

 こうした権利者の不満を解消するため、新商標法では新規定が設けられ、税関は「輸出入される物品の中に、明らかに商標権を侵害している可能性があるもの」を発見した場合、差し押さえて権利者に通知しなければならなくなりました。

 また、権利者は税関で実際に差し押さえられた物品を見ることができるようになりました。商標権の侵害があると思われる場合は、税関に対して商標登録の関連資料を提出して「輸出入者、収集配達員の情報、物品の数量」など関連情報の提供を申請することができるようにもなりました。

 一方、税関は輸出入者に対し、商標権を侵害していないという証拠を提供するよう求めます。輸出入者が証明を提供した場合、権利者は正式な差し押さえのプロセスを経た上で保証金を納め、司法の場に持ち込むことになります。

 もし輸出入者が証拠を提出しなかった場合、税関は一時差し押さえができます。権利者が保証金を納めなければ、税関はサンプルを残した上で物品差押の解除を行います。しかし商標権の侵害はいわゆる「公訴罪」のため、税関は案件を捜査当局に送致します。

 こうして権利者は「輸出入者、収集配達員の情報、物品の数量」など関連情報を得られ、警察が刑事事件として捜査するよう告訴することができるようになりました。

 しかし実際に制度が効果的に運用されるかは、税関が「輸出入される物品の中に明らかに商標権を侵害している可能性があるもの」を発見できるかにかかっています。

自分の商標を守るために

 現行の税関検査制度では、税関に特に注意を払ってもらえるよう、権利者は侵害される恐れがある商標と商品を登録することができます。これは台湾の登録商標が膨大な数で、税関検査官がすべてを記憶することは不可能なためです。

 しかし、たとえ権利者が税関に商標、権利を侵害している可能性のある商品の外観、包装の写真を登録しても、それだけで安心するのは早急です。もともと外観はどれも似通っている上、模倣品の輸出入者は故意にありふれた包装を施すからです。

 その上、輸出入される物品の数量は1日でも膨大なため、コンテナの税関検査はサンプル審査です。小包は1秒にも満たない時間で、目測とX線検査のほか、麻薬、武器など禁輸品の検査が同時に行われています。

 つまり、模造品の摘発を望むのなら、権利者は税関検査官が「気にかけやすい特徴」の情報を提供しなければなりません。たとえば電子回路を含む製品であれば、そのX線写真などが効果的でしょう。

 また、税関で毎年数回開催される講習会で、税関検査官に模造品の特徴を印象付けておくのも手です。日ごろから税関と協力して模造品の取り締まりを行っている弁護士を通じ、税関とのコネクションを確保することも非常に有効な手段です。

 新商標法は、税関での模造品取り締まりの利便性を向上させましたが、実際に効果を上げるには、権利者自らの努力と創意工夫が必要なのです。 

徐宏昇弁護士事務所

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