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第105回 犯罪の罪数と処罰


ニュース 法律 作成日:2012年1月11日_記事番号:T00034806

産業時事の法律講座

第105回 犯罪の罪数と処罰

 知的財産案件で最近、違法にコピーされたゲーム(以下「コピーゲーム」)の販売によって成立した犯罪に対し、どのような処罰を下すべきかが話題となっています。

 CD−ROMやカートリッジの形態をしたコピーゲームであれば、警察が押収するコピーゲームは数万点に上ることもあります。模造されたゲーム機本体の中にコピーゲームが搭載されている場合もあります。

 このような案件に対し裁判所は通常、「被告の販売したコピーゲームがゲームメーカーの著作権と商標権を侵害している」という判決を出します。CD−ROMがない場合は商標法違反、CD−ROMがある場合はコピーCD−ROM販売の罪とします。これは「コピーCD−ROM」に関する罪が商標法違反より重く、最低でも6カ月の有期刑となるためです。

コピーゲームも多様化

 新しいゲーム機が次々と発売されるに従いコピーゲームの種類も増え、警察が捜査で押収するコピー商品は大量かつ多種多様になってきました。現在コピーゲームと呼ばれるものは少なくとも以下のような形態が存在し、被告が問われる罪もさまざまです。

・コピーゲームCD−ROMの作成と販売
 ──著作権法、商標法違反
・コピーゲームカートリッジの販売
 ──著作権法、商標法違反
・ゲーム機改造:本来使えないコピーゲームを使えるようにするためゲーム機本体を改造
 ──著作権法違反(技術的保護手段の回避方法の提供)
・マジコンの販売:本来使えないコピーゲームを使えるようにするために使用するカートリッジの販売
 ──著作権法違反(技術的保護手段の回避方法の提供)、商標法違反、偽造文書行使
・コピーゲームソフトの販売:ゲームのソフトウエアを記録したコンピューターからSDカードなどの記録媒体にコピーして販売
──著作権法、商標法違反
・コピーアプリケーションの販売:ライセンスを受けていない、または模造のアプリケーションの販売
──商標法違反

複数の罪をまとめて処罰

 しかし、多くの案件で、裁判所は、被告の行為がさまざまな異なる犯罪を構成していることを認めながらも、いわゆる「接続犯」や「集合犯」といった理論を用いて、被告が店舗経営において行ったこれらの行為を「多くの罪」ではなく「一つの罪」と判断しています。

 また裁判所は被告が初犯である場合は、刑務所に入らなくてもよいよう、刑期を6カ月以下に抑えます。こうすれば、法の規定により有期刑1日当たり1,000台湾元の罰金に置き換えることができるのです。

 裁判所が前述の「接続犯」「集合犯」といった理論を支持しているのは、台湾の刑法が改正され、「数罪併罰(併合罪)」の理論を強化したためです。本来、裁判所は被告の犯した罪一つ一つに対して処罰を行わなければなりません。しかし、裁判所は「集合犯」という概念を持ち出し、多数の犯罪行為を一つの罰と判断し、一つの処罰で済ませているのです。

 下級裁判所のこのような判断に対して最高裁判所は疑問を投げかけていますが、コピーゲームに関する案件でどのような犯罪行為の組み合わせに対してどのように「接続犯」「集合犯」といった理論を用いるべきか、共通認識は形成されていません。

高額の罰金で納得感

 一方、コピーCD−ROM販売に対する罪が最低で6カ月の有期刑であることから、大量に多種のコピーCD−ROMを販売した案件でも、学生がインターネット上でコピーCD−ROM10枚を売った案件と同じ6カ月の有期刑とする判決がいくつも見られます。これはゲームメーカーにとって大きな不満となっています。

 知的財産裁判所の裁判官の多くは、前述の「接続犯」「集合犯」といった理論を支持し、多数の犯罪行為を一つの罰として判断を下しています。一方、ゲームメーカーを考慮し、知的財産権利者と被告の双方が納得できるよう、被告に高額の罰金を課しています。

 それでもなお、「接続犯」「集合犯」といった理論がゲームに関する案件で不公平な状況を生んでいるのは事実です。現在もいくつもの案件が最高裁判所に上告されており、最高裁が判決を下すまで、このような状況が続くわけです。

徐宏昇弁護士事務所

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