ニュース その他分野 作成日:2007年11月14日_記事番号:T00003726
台湾経済 潮流を読む
近年、ベトナムが外国企業の投資先として以前に増して注目を集めている。各種コスト増加や加工貿易制度の変更などを背景とした「中国一極集中リスク」に対する意識の高まりと代替地の模索、ベトナム版「改革開放」と呼べる「ドイモイ(刷新)」政策の採用を契機とした高成長の持続が、ベトナムに対する関心の高まりをもたらしている。このベトナムにおいて最大のプレゼンスを誇っているのが台湾企業である。
ベトナム計画投資省の統計によると、1988年~07年8月までの累計(認可ベース)で見た場合、台湾は件数で第1位(全体の21.9%)、投資額では韓国、シンガポールに次ぎ第3位の投資国・地域とされている(全体の12.9%)。ただし、台湾の場合、対中投資同様、英領バージン諸島や香港などのタックスヘイブンで投資を行っているケースが多く、実態的には投資額の面でも台湾が最大のシェアを誇っているとされる。
その台湾企業の対ベトナム投資は、これまでのところ労働集約型産業が主体だという特徴がある。台湾経済部投資審議委員会の台湾企業の対ベトナム投資額の業種別シェアによると、最大は紡織・アパレルで全体の28%を占めている。次いで化学製品、食品・飲料、非金属鉱物製品となっている(06年末までの累計値)。中国の場合には、電子部品、コンピュータ・通信・電子製品、電気機械・設備がトップ3業種になっている。このように、台湾企業の対ベトナム投資は、対中投資にも増して労働集約型産業中心で行われてきたことが分かる。
ITメーカーが進出へ
しかし、今年に入り、台湾の大手ITメーカーがベトナムでの大規模な投資計画を発表するようになっており、台湾企業の対ベトナム投資の性格が変質することは確実な情勢だ。
その典型例が、EMS(電子製品の受託製造・設計サービス)を主業務とし、中国内の外資系企業で最大の輸出額を誇る鴻海グループである。同グループは、今年5月に北部バクニン省にデジカメ生産などを目的とした工場団地をオープンさせた。また、7月には、ホーチミン市郊外クチ郡のタンフーチュン工業団地の大規模開発計画、北部バクザン省での工業団地開発、都市建設、ゴルフ場開発計画について、現地政府から認可を受けたと報じられている。鴻海グループ傘下の液晶メーカーである群創光電(イノルックス・ディスプレイ)も、バクニン省で第5世代TFT-LCDのモジュール組立を手始めに、将来的には前工程も含めた一貫生産に乗り出す計画があることを明らかにしている。
加えて、ノートブック型パソコンの受託生産の最大手の一角を占める仁宝電脳工業(コンパル・エレクトロニクス)も3,000億米ドルをベトナムに投じ、09年第1四半期には製造を開始する予定だ。
その理由は、08年に施行される中国の労働契約法による労働コストの上昇、長江デルタ地区における労働力不足の問題を回避するためであり、同社は今後、中国でのノートPC事業の拡張は行わない方針だと説明されている(台湾のIT関連専門紙「DigiTimes」07年11月2日)。
このように、台湾を代表するITメーカーのベトナム進出が本格化し始めたことで、他の台湾系IT関連企業もそれに追随する可能性が高い。実際、仁宝電脳工業のベトナム投資に伴い、10社以上の部品メーカーもベトナムに進出する計画を立てていると伝えられている(「DigiTimes」2007年11月2日)。
現在、少なからぬ日本企業が、中国で台湾系企業を狙ったビジネスや、台湾系企業とのアライアンスを通じた市場開拓を行っている。それは台湾系企業が中国の生産・輸出の約1割を担うほど、大きなプレゼンスを誇っているためである。すでにベトナムにおいても、日系オートバイメーカーや電機メーカーが在ベトナム台湾系企業から部品を調達しているなど一定の協力関係がみられるが、台湾大手ITメーカーの対ベトナム投資の本格化は、日台アライアンスの地平線をさらに広げることになる可能性がある。また同時に、ベトナムにおける日本企業と台湾企業の競争を激化させる恐れもある。それだけに、台湾企業の対ベトナム投資の動向は今まで以上に注視する必要があるだろう。
みずほ総合研究所 アジア調査部 伊藤信悟
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