ニュース 法律 作成日:2013年3月27日_記事番号:T00042794
産業時事の法律講座日本のアダルトビデオ(AV)メーカーが台湾のAVサイトを著作権侵害で告訴した事件は、結局不起訴となりました。報道によると、担当検察官は以下のような判断をしたそうです。
1.AVは文学、科学、芸術またはその他学術的範囲内の創作ではなく、また「公序良俗」に違反しているため、著作権法の保護の対象ではない。
2.当該AVサイトは、適切な警告表示を行い、未成年の閲覧を禁止していたため、「散布猥褻影像罪(わいせつ映像散布罪)」には該当しない。
10年以上前の判決に基づく判断
検察官がこのように判断した理論根拠は、台湾最高裁判所が1999年にAVについて、「社会秩序の維持の妨げとなる、もしくは公共の利益に背く著述は、国家の社会発展に貢献しているとは言えず、かつ著作権法の立法目的とも相反するものである」と認定した判決にあります。
しかし、皆さんもご存じのように、99年当時と現在とでは、台湾の社会は大きく変わりました。当時、アダルト出版物は禁制品でした。しかし現在では、前述の報道で検察官が語るように、被告のAVサイトが「未成年ではない閲覧者」に対してAVを提供することは政府も許可している行為であり、その商業利用は課税の対象ともなっています。にもかかわらず、それらが「公序良俗」に違反していると判断したのはなぜなのでしょう?
司法見解に根本的問題
本案件に対する批評は、一般には、検察官が社会観念の変化を無視して十数年前の判決を引用したことにあります。しかし、最近の裁判所の判決における「わいせつ物」の定義は、「芸術、医学または教育的価値のないわいせつなデータまたは物品」または「その他、性欲を客観的に刺激または満足させ、一般人に不快感を与え、または拒絶されるようなわいせつなデータおよび物品」となっており、これらが犯罪を構成する理由としては、行為者がこれらのデータまたは物品を「散布」する、あるいは「適当な安全隔離処置を取らずにそれを散布し、一般人に接触させること」となっています。
台湾の著作権法の規定では、他者の著作権を侵害する光ディスクの製造・販売は、当事者の告訴を必要としないいわゆる「公訴罪」となっています。しかし、裁判所はこれまで、摘発された違法光ディスクを「著作権侵害光ディスク」と「わいせつ光ディスク」に分類し、前者については著作権法(および商標法)で、後者については刑法(散布猥褻影像罪)で処理をし、後者については他者の商標権などを侵害しているかどうかの判断はしてきませんでした。
このことからも分かるように、AVメーカーが解決しなければならない問題は20世紀の最高裁判所判決だけではなく、台湾の司法システムに根付いてしまっているAVに対する基本見解なのです。
著作権がないのは台湾のみ
本案件に対する批評は、「不当である」という点で一致しています。この点については、知的財産局が03年に出した法律意見も、「アダルト」または「年齢制限が必要」と見なされた作品が、著作権法における著作に該当するかどうかについては「創作性」の有無により判断するとしています。つまりわいせつかどうかということと、著作権の有無は関係ありません。また、知的財産局が在外機関に問い合わせたところによると、アダルト作品の著作権を保護していない国はありませんでした。
中国を例に取ると、中国は10年2月26日に「法で禁止されている出版・放送作品は本法の保護を受けない」という著作権法第4条第1項の規定を削除しています。
ちなみに、「公序良俗」に違反していることが著作権法の保護を受けない理由となることに関する議論としては、その他の「公序良俗」違反の作品の保護についてのものです。例えば台湾では「賭博」は「公序良俗」に違反しているとされていますが、では、賭博サイトのコンピュータープログラム、画面などの著作もAV同様に著作権法の保護を受けないのでしょうか?
コピー産業の成長を助長
AVを著作権法の保護対象から排除している一方、AVを一定の制限のもとに散布してもよいとした結果、台湾はAVサイト大国になりました。以前も、台湾で「光碟管理法(光ディスク管理法)」が制定された際「国外より合法ライセンスを受けた輸出用の録音・録画式光ディスク」は刑法における散布猥褻影像罪を構成しないという規定が設けられ、法律の抜け穴となった結果、台湾はAV光ディスクの製造大国となりました。今回、検察官が「AVはインターネット上で一定の制限のもとに散布してもよい」と認定したことで、これらの産業の成長を助長してしまうことは間違いないでしょう。
規定に基づくと、地方裁判所検察署のあらゆる不起訴処分書は、職権により「台湾高等裁判所検察署知的財産裁判所分署」の審査を受け、そこで不当であると判断された場合は、元の検察署で引き続き調査が行われます。つまり今回の処分書が検察の最終的な判断となるのかどうかは知的財産裁判所分署の判断を待つ必要があります。
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