ワイズコンサルティング・グループ

HOME サービス紹介 コラム グループ概要 採用情報 お問い合わせ 日本人にPR

コンサルティング リサーチ セミナー 経済ニュース 労務顧問 IT 飲食店情報

第52回 「租税回避対策税制」の追加制定について(前編)


ニュース その他分野 作成日:2013年5月15日_記事番号:T00043649

KPMG 分かる台湾会計

第52回 「租税回避対策税制」の追加制定について(前編)

  台湾企業の中には、海外の低税率の国(いわゆる租税回避地)に関連会社を設立するケースがあります。こうした投資スキームは税収不足に悩む中華民国政府にとって課題の一つであり、財政部は2009年に租税回避対策条項として5項目の改善提案を提出しています。このたび、5項目のうち未完成であった2項目(①被支配外国法人税制、②身分の変更による租税回避の防止)が、4月1日の立法院財政委員会で決議されました。

【今回のポイント】

・営利事業者は低税率地域における海外関係会社に投資する場合、当事業年度の海外関係会社の利益のうち持分相当額を持分法により投資収益に計上し、同事業年度の課税所得額に加算する必要があります。

 今回の【KPMG分かる台湾会計】ではこの追加規定について、前編(①被支配外国法人税制)と後編(②身分の変更による租税回避の防止)に分けて取り上げたいと思います。なお、本稿の意見に関する部分は筆者の個人的見解であることをあらかじめお断りしておきます。

所得税法第43条の3
(15年度より施行予定)

第1項

 営利事業者は直接または間接で支配している中華民国域外の低税率地域における関係会社の当年度の利益については、保有する当該関係会社の持分割合に基づいて投資収益を計上し、当年度の課税所得に加算する必要がある。営利事業者が実際に関係会社から利益分配を受領した時点においては、(一部省略)課税所得に加算する必要はない。受領した分配金が過去に計上した投資収益を超過する場合の超過部分については、分配年度の課税所得に加算する。

第2項

 前項における低税率地域とは、当該地域の法人税などの税率が中華民国の法人税などの実効税率(およそ17%)より3割以上低い地域を指す。

第3項

 第1項に称する関係会社については、会社法および関連法規に従い認定する。投資収益の計上による国外税額控除範囲、関連計算方法およびその他順守事項については財政部が定める。

解説

 現行法上、企業が海外企業へ投資しても、当該海外企業が利益配当をしない限り、税務上は投資収益を計上する必要はありません。例えば、企業(親会社)が、所得税率が極めて低い租税回避地など(タックスヘイブン)に子会社を設立し、当該子会社に利益を留保する場合、中華民国にある親会社では子会社投資に伴う投資利益は発生せず、所得税は回避されます。

 そこで、このような投資スキームにおける租税回避状況を改善するため、財政部は「被支配外国法人税制」を制定しました。今後は、企業がタックスヘイブンなどに所在する企業へ投資する場合、当該企業の利益のうち持分相当額を持分法により投資収益に計上し、同事業年度の課税所得額に加算することになります。利益配当によるキャッシュに先立って課税されるため、投資者である台湾企業にとっては納税資金負担が増加する可能性があります。

 なお、本件税制の一部は審議過程にあり、投資先企業の除外規定などが今後追加制定されると考えられます。

 本件の概要などにつきまして本稿をご参考いただきますとともに、詳細につきましては顧問会計事務所にもお問い合わせの上、業務にお役立ていただけますと幸いです。

 本稿に関するお問い合わせは、以下までお願いいたします。

KPMG安侯建業聯合会計師事務所 日本業務組
Mail:yoshikazumatsumoto1@kpmg.com.tw
TEL:886−2−8101−6666
TEL: 886-2-8101-6666
松本 芳和(内線12645)
太田 耕蔵(内線13390)

KPMG 分かる台湾会計