ワイズコンサルティング・グループ

HOME サービス紹介 コラム グループ概要 採用情報 お問い合わせ 日本人にPR

コンサルティング リサーチ セミナー 経済ニュース 労務顧問 IT 飲食店情報

第57回 移転価格の調査の傾向について


ニュース その他分野 作成日:2013年11月20日_記事番号:T00047103

KPMG 分かる台湾会計

第57回 移転価格の調査の傾向について

 台湾での移転価格制度は、一定規模の関係会社間取引がある場合、移転価格報告書を準備する必要があるとされ、日系企業にお勤めの読者の皆さまの中には外部専門家へ作成を依頼されている方もいらっしゃることと思います。そこで、今回の本コラムでは、台湾国税局による移転価格に関わる調査の傾向について取り上げたいと思います。なお、本稿の意見に関する部分は筆者の個人的見解であることをあらかじめお断りしておきます。

【今回のポイント】
・台湾の税法では、移転価格報告書における独立企業間価格の分析に関して、原則として取引ごとに独立企業間価格に適合するか否かの分析を行うことが求められています(「個別テスト」方式)。

・ただし、各取引の間に関連性や連続性が認められるなどの場合には、例外的に取引を区別せず、一括して分析することが認められています(「一括テスト」方式)。

 近年、移転価格報告書における独立企業間価格の評価方法について、国税当局より多数の照会が出されています。多くは「一括テスト」方式による分析の是非について疑義が提示され、「個別テスト」方式の分析を要請される傾向にあります。移転価格報告書における税務機関が求める「個別テスト」方式とは、関係会社間取引を「取引種別」等の観点から区分し、独立企業間価格に適合しているか否かを分析する方法です。

1.「取引種別」に基づく区分

 台湾の税法では、移転価格報告書における独立企業間価格の分析に関して、原則として取引種別ごとに分析を行うことが求められています(営利事業所得税非独立企業間移転価格監査準則(以下、「TP監査準則」)第7条第3号)。ただし、各取引種別(例:仕入取引、コミッション取引、管理報酬の支払取引など)の間に関連性や連続性が認められるなどの場合には、例外的に取引種別を区別せず、一括して分析することが認められています。

 しかし、近年の税務調査では、企業が上記の例外的な考え方に基づき「一括テスト」による分析の妥当性を主張していても、関係会社間取引の取引種別の関連性や連続性等の企業の主張が十分に斟酌(しんしゃく)されず、取引種別ごとの「個別テスト」による分析が要請される傾向にあります。そのような要請を受けた企業側は、移転価格に関連してそれ以上の疑義を招かないために、想定外のコストを投入し「個別テスト」による分析を実施するケースが見受けられます。

2.「取引相手先」に基づく区分

 関係会社間取引の「個別テスト」の実施に当たっては、原則として、「取引種別」に加え「取引相手先」によっても区分する必要があるとされています。ただし、下記aまたはbの要件を満たす場合には、相手先別に区分した関係会社間取引の「個別テスト」は不要とされています(財政部2008年11月6日付台財税第09704555160号通達)。

a.関係会社間取引による損益が営業収益/費用に該当し、同様の関係会社間取引の年間取引総額が1,000万台湾元以下であること。

b.関係者間取引による損益が営業収益/費用に該当せず、同様の関係会社間取引の年間取引総額が500万元以下であること。

 例えば、企業が複数の関係会社との間で同種の取引を行う場合でも、特定の関係会社との取引金額が少額であり、同じ取引種別の関係会社間取引の総額が1,000万元(または500万元)を超えない場合、取引相手先ごとの分析を行う必要はありません。

 ただし、総額が基準額を超える場合には、取引相手先別に区分した上で、関係会社間取引に対して「個別テスト」を実施する必要があります。税務調査の実務では、実際に相手先ごとの分析を要請された事例は多くはありませんが、留意する必要があります。

 税務調査の際に、税務機関から「個別テスト」による分析を要請される場合、限られた時間内で情報の収集および想定外の基準分析の実施が必要となり、対応が困難になる可能性があります。企業におかれましては、無用な税務当局の疑義を招かないためにも、改めて関係会社間取引の取引種別による「個別テスト」の必要性を吟味する必要があると考えられます。

 本件につきまして本稿をご参考いただきますとともに、詳細につきましては顧問会計事務所にもお問い合わせの上、業務にお役立ていただけますと幸いです。

 本稿に関するお問い合わせは、以下までお願い致します。

KPMG安侯建業聯合会計師事務所
日本業務組
Mail:kota1@kpmg.com.tw
TEL: 886-2-8101-6666
松本芳和(内線12645)

太田耕蔵(内線13390) 

KPMG 分かる台湾会計