ニュース その他分野 作成日:2013年6月19日_記事番号:T00044275
KPMG 分かる台湾会計今回は、前回に引き続き、本年4月に立法院を通過した「租税回避対策税制」について、後編「②身分の変更による租税回避の防止」を説明させていただきます。「租税回避対策税制」は、海外低税率地域を利用した租税回避行為に対抗する制度であり、従来より財政部を中心として対応が求められていた税制です。背景としては、台湾企業には、英領バージン諸島など低税率地域に中間持ち株会社などを設立し、租税を回避するケースがありますが、このような投資スキームを利用した租税の回避行為に対して課税を行うというものです。現在、当該税制は2015年から施行される予定です。
なお、本稿の解説は筆者の個人的見解であることをあらかじめお断りしておきます。
【今回のポイント】
・15年以降、低税率地域に中間持ち株会社を設立している企業で、台湾で意思決定や管理などを行っている企業は、台湾に実質的な運営実態があると認定され、関連法規に基づき営利事業所得税などの申告・納税義務が発生する。
・運営実態の認定要件については財政部が別途取り決め、公表する。
所得税法第43条の4(草案)(15年度以降施行)
第1項
外国法令に基づいて設立されるものの、その実質的な管理場所が中華民国域内にある営利事業者は、中華民国域内の営利事業者と見なされ、(中略)、営利事業所得税が徴収される。
第2項
前項の実質的な管理場所とは、営利事業者がその事業運営に必要な管理および主要な意思決定を行う場所を指す。その認定要件およびその他関連事項の細則については、財政部が定める。
解説
今回取り上げる「身分の変更による租税回避の防止」とは、主に台湾企業により台湾域外の低税率地域に設立された会社のうち、一定の要件を満たす会社を台湾の居住者と認定した上で台湾の営利事業所得税などを適用し、租税回避行為を防止することを言います。
具体的には、台湾域外に会社を設立し投資を行うものの、当該域外投資先企業(関係会社)がペーパーカンパニーなどで、投資元である台湾企業によって実質的に台湾で運営されていると見なされる場合(実際管理場所が台湾である場合)、当該域外の投資先会社は台湾の営利事業者(居住者)に該当するとする考え方に基づくものです。このように実質的な事業拠点に基づいて居住者の認定を行うことは、現在の税務実務における国際標準であると考えられます。
台湾の営利事業者の中には、低税率地域に関係会社を設立することによって、投資利益に対する課税を回避しようとするケースが見られます。
しかし、「租税回避対策税制」が施行される15年以降は、形式的には台湾とは関係のない低税率地域で設立された会社であっても、実質的な事業運営が台湾で行われているような会社に対しては、台湾の居住者に認定され、営利事業所得税などの申告・納税義務が課せられる可能性があります。
なお、今回の草案では実際管理場所の詳細な認定要件については十分に定められておらず、今後、財政部より追加公表される予定です。
また、前編において解説した「①被支配外国法人」の認定による投資元の台湾企業における持分法による投資利益の所得計上と、本編で取り上げた実際管理場所に基づく「②身分の変更による租税回避の防止」による域外投資先企業の居住者認定が両立するケースも考えられますが、その場合の税務上の取り扱い(課税関係)についても、今後の検討課題になると考えられます。
本件の概要につきましては以上をご参考いただきますとともに、詳細につきましては顧問会計事務所などにお問い合わせの上、業務にお役立ていただけますと幸いです。
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