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第139回 「台北銀行」をめぐる商標争い


ニュース 法律 作成日:2013年7月24日_記事番号:T00044924

産業時事の法律講座

第139回 「台北銀行」をめぐる商標争い

名称に「台北」を含む銀行

 「台北市銀行」は、1969年に台北市政府によって設立された後、93年に「台北銀行」に社名を変更しました。一方、「富邦銀行」は92年に富邦集団によって設立された新銀行ですが、06年に「台北銀行」を合併し「台北富邦銀行」となりました。

 「台北国際商業銀行」は、48年に設立された「台北区合会儲蓄公司」が前身となっている「台北区中小企業銀行」が再編された銀行で、06年に「建華商業銀行」と合併し「永豊商業銀行」となりました。

 「台北稲江信用組合」は、17年に台北の大稲テイ(テイは土へんに呈、現在の迪化街一帯)に設立された「信用合作社」で、その後社名を「台北市第一信用合作社」に変更した後、06年の再編で「稲江商業銀行」へ名称を変更、09年に再度名称を変更して「大台北商業銀行」となりました。名称変更当時、前述の「台北銀行」はすでに「台北富邦銀行」の名称を使用していました。

 これらの銀行は、全て「台北」という名称を使用しているか、かつて使用していました。そんな中、「台北国際商業銀行」は90年に銀行業への使用を指定したサービスマーク、第48312号「台北企銀T.P.B.B.」を登録し、「台北銀行」も93年に銀行業への使用を指定した商標、第70262号「台北銀行TAIPEI BANK」を登録しました。

「台北富邦銀行」対「大台北銀行」

 台北富邦銀行は09年、大台北銀行が「大台北」を会社の名称として使用しないことを求め、知的財産裁判所に提訴しました。それに対して大台北銀行は「台北富邦銀行は合併後は一度も台北銀行という商標を使用していない」との抗弁を行いました。これらの訴えに対して第一審の知的財産裁判所は、▽「大台北銀行」と「台北銀行」の商標は近似してはいるが、消費者を混交するには至っていない▽「大台北銀行」の商標は「台北銀行」の商標の識別性を減損するものではない▽台北富邦銀行はその企業イメージ上「富邦」を強調しているため、「大台北銀行」という名称と不公平競争の関係にはない──と判断し、10年6月に台北富邦銀行敗訴の判決を下しました。

 これを不服として控訴した台北富邦銀行に対して、第二審の知的財産裁判所は、11年10月に台北富邦銀行の逆転勝訴の判決を下しました。判決理由の中で裁判所は「両者の主要な識別部分は完全に相同しているといえ、また上告人の係争商標の識別性を減損する事実および商品またはサービスに関連する消費者が両者の出所を混交・誤認する結果が認められる」と判断したほか、大台北銀行が公平取引法に違反しているとも判断しました。

 この判決に対して、大台北銀行は最高裁判所に対して上告を行いましたが、最高裁判所は今年4月に上告棄却の判断を下し、理由を以下のように示しました。

1)商標法は「登録主義」を採用しているため、登録を受けている商標は全て法律の保護を受け、排他的な権利を有する。

2)「被上告人は、合併後は新しい商標を使用しているが、消費者または他行との間で使用されているキャッシュカード、クレジットカード、預金通帳、台北市市庫委託徴税プレートなどには全て係争商標が引き続き使用されている。また、上告人の会社名称の主要識別部分である「大台北銀行」は、係争商標である「台北銀行」との間で、消費者を混交・誤認させている。」

3)「『大台北銀行』の名称は、商標『台北銀行』の識別性を減損し、公平取引法に違反している」との知的財産裁判所の判断が不当である。しかしそのことは本判断には影響を及ぼさない。

 本件「地名商標」の争いに対して、最高裁判所は商標「台北銀行」の登録者である台北富邦銀行を勝訴させました。その理由は台北富邦銀行が一部の業務範囲内において商標「台北銀行」を使用していたからです。

 一方、本件とは対照的なのが、以前、台北国際商業銀行が、商標「台北銀行」は商標「台北企銀T.P.B.B.」と近似しており、混交されるという理由で提起した「無效審判」です。しかし、知的財産局は不成立としたため、台北国際商業銀行は当時の最高行政裁判所に訴訟を提起しました。結果、最高行政裁判所は01年に却下しましたが、訴訟中、当時の台北銀行は、「台北国際商業銀行は、98年5月14日に社名を『台北国際商業銀行股份有限公司』に変更しているため、社名変更後も商標『台北企銀T.P.B.B.』を使用することは不可能だ」との主張を行っていました。

 異なる商標、異なる立場、異なる主張とくれば、もちろん結果も異なります。これが法律案件の最も面白いところでもあります。

 なお、大台北銀行は判決を受け、「瑞興商業銀行」への変更を株主総会で決議し、早ければ8月にも法的手続きが完了する見通しです。 

徐宏昇弁護士事務所

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