ニュース その他分野 作成日:2013年9月17日_記事番号:T00045945
台湾経済 潮流を読む8月、「自由経済モデル区」が始動した。規制緩和特区とも呼べる「自由経済モデル区」には、馬英九政権の経済活性化策の重要な柱としての位置付けが与えられており、その推進にも力が入っている。9月初旬には、早速主管官庁である行政院経済建設委員会(経建会)の管中閔主任委員が日本に招致活動に訪れた。
「自由経済モデル区」は2段階で推進されることになっている。第1段階では、立法院の可決を要しない行政法規の改正の範囲内で、規制緩和が進められることになっている。また、7カ所の自由貿易港区(台北港、基隆港、台中港、安平港、高雄港、蘇澳港、桃園空港)、屏東農業生物科技園区が第1段階の「自由経済モデル区」に指定された。第2段階では、「自由経済モデル区特別条例」を立法院で可決、施行し、規制緩和をよりいっそう推進すると共に、対象地域の追加を図ることなどが計画されている。
自由経済モデル区で何が可能か
「自由経済モデル区」に関して数多く聞かれる質問は、果たして「自由経済モデル区」で何が新たにできるようになるのか、という点である。その点に関し、経建会は、手始めに「自由経済モデル区」に4つの機能を持たせると説明している。
具体的には、▽良質な物流インフラ、税関サービスを備えた「スマート物流」機能▽メディカルツーリズムを主体とする「国際医療」提供機能▽輸入農産物と台湾の技術・人材などを組み合わせることを狙った「付加価値農業」機能▽日米欧などが持つ技術や特許を取り入れ、台湾が持つ優れた生産能力や中国など発展途上国とのネットワークを組み合わせ、発展途上国市場の開拓を図るといった「産業協力」機能──などが想定されている。
そしてこの目標を実現するために、「自由経済モデル区」内で、▽人の移動に関する規制の緩和(就労ビザの発給条件など)▽モノの移動の自由化推進(関税・営業税・貨物税の減免、中国製品の輸入規制緩和など)▽金融取引規制の緩和▽中国からの投資受け入れ規制の緩和▽投資・研究開発(R&D)投資減税、ライセンス収入に対する減税などの実施▽土地取得支援▽インフラ整備──などが推進される予定である。
上述した機能をどの程度台湾に根付かせられるかについては、疑問を提起する声もある。例えば、「産業協力」に関しては、日本からのAMOLED(アクティブマトリクス式有機EL)パネル技術の導入などが例示されているが、近い将来にそれが実現可能なのか、といった声がないわけではない。
企業側からの提案に受け入れ余地
ただし「自由経済モデル区」はまだ発展途上にあり、上記の4つの機能に拘泥して考える必要はない。安倍政権が推進する「国家戦略特区」同様、民間企業や地方公共団体から広く規制緩和の提案を受け付け、それを基に試行し、場合によっては、「地理」的範囲にすらこだわらず、「分野」でも特区と認定する(安倍政権の言う「バーチャル特区」)という柔軟性を持ったもののようだ。このように「自由経済モデル区」のコンセプトは固まったものではなく、走りながら考えるという性格を強く持っている。逆に言えば、民間企業自ら経建会などに規制緩和の提起をすれば、それが検討されやすい局面にあるといえるのだ。
現在、台湾の政府系シンクタンクは日本の「国家戦略特区」について研究すると同時に、日本企業の今後の台湾活用法とそれを阻害する制度について、精力的に調査しはじめている。「自由経済モデル区」という重要政策を成功させる上で、日本が重要との認識を馬政権が持っていることの現れだろう。「自由経済モデル区」の内容がどうなるのか分からない、という待ちの姿勢ではなく、自社の台湾ビジネスの発展に資する規制緩和やインフラ整備について早期かつ積極的に働きかけを行うべきだろう。
みずほ総合研究所 アジア調査部中国室長 伊藤信悟
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