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第79回 2014年の台湾経済展望


ニュース その他分野 作成日:2013年12月17日_記事番号:T00047628

台湾経済 潮流を読む

第79回 2014年の台湾経済展望

 残念ではあるが、2013年の台湾の実質GDP成長率が年初の予測を下回ることが確実な情勢だ。行政院主計総処は3.2%、みずほ総合研究所は2.1%と予測していたが、それぞれ1.7%に下方修正している。

 来年の予測は行政院主計総処が2.6%、当社が2.5%だ。前年より成長するがその足取りは重いという見方だ。

欧米経済の立ち直りに期待

 成長率回復の原動力として当社が想定しているのは欧米経済である。ユーロ圏は巨額の政府債務を抱え、財政再建を余儀なくされてきたが、再建が一定程度進んだため、財政面からの景気下押し圧力が和らぐ。その結果、ユーロ圏の14年実質GDP成長率は13年の−0.4%から0.9%とプラスに転ずる見込みだ。米国は家計のバランスシート調整の進展による民間需要の回復によって、13年の1.7%から14年には2.3%に高まりそうだ。欧米経済の立ち直りを追い風に、台湾の輸出も回復基調をたどると考えられる。

輸出回復は緩やかに

 ただし、欧米経済の持ち直しはそれほど速いものではない。また、台湾の最大の輸出先である中国は、13年実質GDP成長率を7.6%、14年は7.3%と予測している。ここ数年の拡大が速過ぎた投資を中心に、経済が減速していくことになるだろう。さらに、中国企業のキャッチアップの影響で、台湾輸出の回復は緩やかなものにとどまると考えられる。

 輸出の伸びも弱いものになることから、民間設備投資の回復力も限定的なものになるだろう。台湾積体電路製造(TSMC)に代表される一部半導体メーカーの先端設備導入の継続、4G基地局の設置といった好材料はあるものの、広範な産業で強気の投資が行われる可能性は低い。実際、中華経済研究院(中経院、CIER)が発表している製造業の6カ月先の景況感指数を見ると、13年11月時点で48.3と、改善・悪化の境目である50を下回っている。

 民間建設投資も強いものにはならないだろう。台北市を中心に不動産価格が高騰しており、台湾の金融・税務当局がバブル回避のため、不動産投機を抑制する構えを見せているためだ。また、米国のQE3縮小観測を背景とする米国の長期金利上昇の影響を受け、台湾でも長期金利が上がっており、それが不動産取引の抑制を通じて民間建設投資を下押しする圧力として働きそうだ。

 公共投資については、13年から積み増しされることになりそうだ。14年末に統一地方選が控えているためだ。ただ、公共債務法の制約があるため公共投資を大幅に積み増すことは難しい。行政院主計総処の予測値を見ても、14年の公共投資の実質伸び率は0.4%と13年の−2.3%から改善はするが、実質GDP成長率をわずか0.01%引き上げる効果しか持ち得ないとされている。

 以上のように輸出、投資の回復力が弱いことから、雇用・所得環境の改善余地は限定的となり、個人消費の回復も緩慢なものにとどまる可能性が高い。

大胆な規制緩和が必須

 こうした状況のため、馬英九政権にアベノミクス的な大規模な経済対策を求める声がある。ただし、不動産価格の上昇が懸念されるため、大幅な利下げといった「大胆な金融政策」は困難だ。また上述のとおり、「機動的な財政政策」にも法的な制約がある。それだけに馬政権は、自由経済モデル区などを舞台に大胆な規制緩和を実現しなければならない。

 また、ニュージーランド、シンガポールに続く非国交保有国との経済連携協定の推進、ECFA商品貿易協定の締結を通じて、台湾の輸出競争力強化に有利な環境を築き上げる必要がある。

 馬政権は今年低成長率と低支持率に苦しんだが、「成長戦略」の構想力と実行力を発揮し、成長率、支持率ともに引き上げられるか。統一地方選のある14年は今後の政治・経済の行方にも関わる年だけに、馬政権にとって正念場となるだろう。

みずほ総合研究所 アジア調査部中国室長 伊藤信悟  

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