ニュース その他分野 作成日:2014年2月11日_記事番号:T00048531
台湾経済 潮流を読む2月5日付本紙によると(原典は『経済日報』同日付記事)、金融監督管理委員会(金管会)が銀行に対して中国向けエクスポージャーを今年の重点検査項目にすると決定したそうだ。海峡両岸経済協力枠組み協定(ECFA)の発効に伴い、台湾系銀行の中国支店が急増したという背景もあるが、中国のシャドーバンキング(影の銀行)の先行きに対する警戒感が高まっていることが、検査強化の主な要因と報じられている。
影の銀行が招く不健全な投資
「影の銀行」は、銀行のオンバランスでの貸し出し(貸借対照表上の融資)を除く、オフバランスでの資金供給のルートを指す。中国では世界金融危機後に影の銀行が急速に拡大した。4兆人民元の経済刺激策を契機とする銀行貸出の激増を抑えるため、中国政府が窓口指導などを通じて業種別貸出規制や貸出総量規制を敷く中、銀行融資に代わる資金調達手段として影の銀行が台頭したのだ。
影の銀行の典型例が「理財商品」と呼ばれる銀行が販売する小口の資産運用商品だ。中国では預金金利が低く抑えられていることもあって、個人投資家などが預金金利よりも高い利回りが期待できる理財商品に群がった。その結果、理財商品に代表される影の銀行の規模は20兆~30兆元程度に膨らんでいるとされる(対GDP比で35~52%程度)。
このような経緯で発展しただけに、影の銀行に対する監督管理体制の整備が追い付いていない。また、非効率・不健全な投資が行われている可能性が高い業種・企業(デベロッパー、地方政府融資平台、生産能力過剰業種など)に多くの資金が流れているようだ。
相次ぐデフォルトの可能性
中国政府も規制強化や金融引き締めなどにより影の銀行の野放図な拡大を抑えようとしているが、その過程で影の銀行のほころびが露呈してきた。1月には総額30億元もの理財商品の元利償還ができない可能性があるとの騒ぎが起きた。最終的に救済者が現れ、債務不履行(デフォルト)は回避されたが、今後も同様の騒ぎが起こる可能性は否定できない。中国のバランスシート調整が道半ばだからだ。
足元では中国の資本ストックの対GDP比はトレンド線からかつてないほど大きく上振れている(みずほ総合研究所推計)。その証拠に、セメント・鉄鋼・船舶などで生産能力過剰問題が深刻化している。その解消には3年程度は必要とみられているほどだ(次ページ図表参照)。また、不動産在庫の積み上がりも顕著で、今後その整理の過程で理財商品のデフォルトが増える可能性がある。
中国政府は今後もしばらくは救済を続ける可能性が高い。理財商品離れによる連鎖的なデフォルトが起こるリスクがあるためだ。また、預金保険制度や金融機関の破綻処理メカニズムが未整備の状況で金融機関の倒産を容認すれば、金融全体の機能不全を招く恐れもある。
ただし、救済を長期にわたって続けた場合、モラルハザード(倫理観の欠如)による非効率な投資が今後も行われ、後にさらに大きな経済調整を迫られることにもなりかねない。中国政府はソフトランディング(軟着陸)に向けた細い道を探りながら歩いている状態にある。
台湾経済の成長足かせにも
対中輸出額の規模が対GDP比で16%にも達している台湾経済にとっても中国の金融不安は悪夢だ。その悪夢の現実化を避けるためには、中国政府による救済は現時点においては必要悪かもしれない。ただし、政府による救済継続は、中国における生産能力過剰問題や不平等競争といった構造問題の解消を遅らせ、台湾経済、台湾企業の成長を阻害することを意味する。中国の影の銀行の問題は、中期的にみて台湾経済にも「影」を落としそうだ。
みずほ総合研究所 アジア調査部中国室長 伊藤信悟
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