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13年10大ニュース!(2位)


ニュース その他分野 作成日:2013年12月27日_記事番号:T00047875

月間5大ニュース

13年10大ニュース!(2位)

【2位】環境汚染企業に警告、ASEに操業停止処分

 半導体パッケージング・テスティング(封止・検査)世界最大手、日月光半導体製造(ASE)の高雄K7工場の一部工程に対し、高雄市政府環境保護局(環保局)が12月20日、違法排水を理由に操業停止を命じた。ASEは21日正午に操業を停止し、週明け23日午後に環保局に対し再開計画書を提出した。当初は最低半年は操業できず、大手顧客の受注を奪われると推測されていたが、張家祝経済部長は23日、2~3カ月以内に再開できれば、半導体サプライチェーンに対する影響は限定的になると発言。台湾経済を支えるハイテク大手に対する異例の処分は、経済発展と環境保護のバランスを考慮した上での、公共心を欠いた企業に対する警告の意味合いが目立った。


陳菊・高雄市長(右)は22日、張虔生董事長(左)の訪問を受け、「操業停止に勝者はいない」と話し、再開計画書を受け付ければ速やかに対応すると述べた(中央社)

映画『看見台湾』で注目

 高雄市環保局は操業停止命令に際し、経済部加工出口区(輸出加工区)楠梓園区のK7工場は2011年に3回、12年に3回の水汚染防治法違反による処罰を受けたが改善が見られず、今年10月1日の検査でも排水基準を満たさず、しかも希釈した排水で検査の目を欺こうとした上、その後も未許可の大量排水や提出書類の虚偽が確認されたと、その悪質性を指摘した。排水の有害物質ニッケル含有量は4.38ミリグラム/リットル(mg/l、基準値は1mg/l)に上り、流れ込む後勁渓(高雄市楠梓区などを流れる河川)と市民の健康を守らなければならないと強調した。

 台湾では11月1日公開のドキュメンタリー映画『看見台湾(ビヨンド・ビューティー)』で黄土色の汚水が流れる後勁渓などが映し出され、人々の環境意識が急速に高まっている。環境保護団体は、汚水が流れ込む海洋の魚介類を口にするわれわれが被害者となって、ASEのコスト削減を支える構図はおかしいと強く批判した。

経済偏重脱却の契機か

 ただし、K7工場の操業停止命令はニッケル含有排水を排出したバンピング工程に限定され、ASEが見込む損失は月1,800万米ドル、同社売上高の3%弱にすぎない。K5、K11工場は12月11日の追跡検査で罰金を科されたが、操業停止は免れた。桃園県の中レキ工場(レキは土へんに歴)は20日の再検査で改善が確認できたと、おとがめ無しだった。

 一方、行政院環境保護署(環保署)の沈世宏署長は23日、高雄市は「ショー」で汚染問題の深刻さを印象付けると同時に、正義を貫かなければならないと強調。これに先立つ21日には、後勁渓周辺の工場100カ所以上を全面検査すると表明した。

 ASE問題に続き、彰化県の複数の電気めっき工場の違法排水も摘発され、抑制効果が薄い最高60万台湾元という行政罰の罰金を引き上げる動きもある。ASE事件は、環境破壊に対し見て見ぬふりの経済偏重主義を見直す契機になるかもしれない。 

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