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第87回 防災・インフラ補修分野のアライアンス強化を


ニュース その他分野 作成日:2014年8月12日_記事番号:T00052055

台湾経済 潮流を読む

第87回 防災・インフラ補修分野のアライアンス強化を

 7月23日の復興航空(トランスアジア・エアウェイズ)旅客機の墜落事故、7月31日深夜から1日未明にかけての高雄市内におけるプロピレン輸送管大爆発事故と、多くの人命を失う痛ましい事故が続いた。改めて「安心・安全」の大切さを感じずにはいられない。

 台風や地震が多い土地だけに、「安心・安全」を高めるためには、台湾も日本同様、防災に注力する必要がある。例えば、2009年に「八八水害」、台風に伴う集中豪雨により高雄県小林村(当時)で深層崩壊が発生、治水対策が馬英九政権の喫緊の課題に位置付けられたことが記憶に新しい。

日台共通の課題

 高度成長期に大規模インフラ開発が行われてから時間が経過している点でも、日本と台湾は共通だ。日本ではトンネルの天井板崩落事故が起きたが、台湾でも今後インフラ補修の重要性が高まっていくだろう。

 財政資金面からもインフラ補修が検討されていくように思われる。今年に入り、馬政権は中央政府の債務残高をこれ以上大幅に増やさないと宣言している。中央政府債務残高が公共債務法の定める上限にかなり近づいてきており、いざ大きな自然災害が起こった時に、復興資金を出せなくなってしまうことを警戒しているためだ。実際、14年度の中央政府債務残高は前3年のGDP平均値対比38.4%にまで上昇している(予算ベース)。公共債務法上の上限である40.6%まで、あと2%ポイント強しかない。

補修にコストメリット

 馬政権は、財政再建を図りつつインフラ整備を進めるために、PFI(Private Finance Initiative、公共施設等の建設・維持運営等に民間の資金や経営能力等を活用すること)をより積極的に導入しようとしている。もちろんそれも良策である。だが、新設よりも低コストであり、かつ、耐久性の面でも新設と比べて遜色がないのであれば、インフラの補修により多くの資源を割いていくべきではないかと思われる。

 上述のとおり、防災やインフラ補修の重要性の高まりという点で、日台には共通点が多い。しかし、これらの領域で日台アライアンスを大きく進めようという意欲は、馬政権の中でそれほど強くないとの評を聞いたことがある。介護・健康・医療の分野で日本とのアライアンスを積極的に推進していこうという機運は高まっているが、「万が一のために備える」という性格の強い防災やインフラ補修に、多くの財政資金や人的資源はなかなか割きづらいということのようだ。

民間企業が参与しやすい場を

 むろん、防災・インフラ補修といった分野で、相互交流がないわけでは決してない。例えば、日台青少年交流「キズナ強化プロジェクト」などを通じて、台湾の青少年や政府関係者を招き、東日本大震災の被災地を訪問してもらうという取り組みがなされている。その他にも、学術界、NGOなどでも防災に関する日台交流が行われている。

 こうした隊列に民間企業がより積極的に参与しやすくなるような場・仕組みができれば、日台双方にとって「安心・安全」をより効率的に高められるのではないだろうか。基準・認証の違いの克服なども必要だろうが、日台協力の余地はもっと広げられるように思われる。

みずほ総合研究所 アジア調査部中国室長 伊藤信悟

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