ニュース その他分野 作成日:2015年1月13日_記事番号:T00054841
台湾経済 潮流を読む 2014年は3月に発生したヒマワリ学生運動、7月31日深夜から8月1日未明にかけて起こった高雄市の大規模ガス爆発、9月に発覚した違法ラード問題、11月の統一地方選挙における中国国民党の歴史的大敗など、政治・社会を揺るがす大きな出来事が起こった年だった。それに対して、経済は緩やかな回復基調を保ち、昨年通年の台湾の実質GDP成長率は前年比+3.5%程度となった見込みである(13年の実績は同+2.2%、図表)。
回復の主因は、輸出の加速であった。とりわけiPhone6の発売が台湾の輸出を強く後押しすることになった。また、投資も民間設備投資を中心に緩やかな回復を遂げた。ファウンドリーや半導体後工程メーカーが競争力強化のために先進設備導入の動きを進めたことや、航空会社が機材調達に動いたことが投資の回復の主因となったとみられる。個人消費にも明るさがみられるようになった。失業率の持続的な低下や長期にわたり低迷していた実質賃金が回復色を強めたことが個人消費の追い風となった。円安や新車種の投入などにより、自動車販売台数も高い伸びを記録した。
輸出は一転伸び悩みか
15年も台湾経済は昨年と同程度の成長率を維持することができると予測している。輸出に関しては、14年と比べて伸びがやや落ちるだろう。米国を中心に先進国経済が回復の勢いを増すとみられることが好材料とはなるが、iPhone6ほどの強い輸出けん引力を持つ新製品の登場は期待しづらい上、中国の在庫調整圧力が足元で強まってもいる。これらのマイナス要因が台湾の輸出の伸びを抑えることになると考えられる。
民間投資は加速
ただし、内需は緩やかながらも加速するだろう。第一に、民間設備投資の緩やかな加速が期待できる。例えば、台湾積体電路製造(TSMC)は資本支出を14年の96億米ドルから15年には100億米ドル以上に引き上げるとの方針を発表している。また、半導体後工程メーカーに代わって、DRAMメーカーの投資の規模が積み増しされる見込みであるほか、長らく投資規模を削減してきた液晶パネルメーカーも15年は幾分投資額を引き上げる模様である。
航空業界も日本路線など短距離路線の拡充を主目的に、航空機調達の動きを続けると報じられてもいる。価格高騰を背景に不動産市況が悪化に転じ、それが民間建設投資の減速を招く可能性があること、今年は昨年以上に公共投資が削減される見通しであることが投資の先行きのマイナス材料とはなる。しかし、民間設備投資の勢いがこれらのマイナス材料に勝り、投資は全体として昨年よりも小幅ながら伸びを高めると考えられる。
また、個人消費についても緩やかな回復が見込まれる。生産年齢人口の伸び鈍化を背景に、労働需給がひっ迫傾向にある上、原油価格が大きく下落した結果、消費者物価上昇率が低下し、購買力が高まることが想定されるためだ。輸出環境の悪化や昨年を上回る自動車販売は期待しにくいといったマイナス材料もあるため、力強い加速までは望めないが、個人消費は堅調に推移するだろう。
政治から目が離せない1年に
今なお欧州や中国がバランスシート調整の途上にあるほか、米利上げの加速を契機に新興国から資金が流出し、世界経済が混乱するリスクも払拭(ふっしょく)されたわけではない。したがって警戒すべきはやはりダウンサイドリスクである。
また、台湾内部に目を向けると、総統選、立法委員選モードに政治が入っていく中、対中政策などをめぐって政治的・社会的不安が発生する恐れがないとはいえない。懸案となっている両岸協議監督条例の制定問題、中国とのサービス貿易協定や物品貿易協定をめぐる問題に与野党がどのような解答を示すのかなど、政治の先行き不透明感が強いからだ。幸い昨年は政治が景気の基調を大きく変えるほどのショックを経済には与えなかったが、今年はどうか。景気見通しの上でも政治から目が離せない1年となりそうだ。
みずほ総合研究所 アジア調査部中国室長 伊藤信悟
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