ワイズコンサルティング・グループ

HOME サービス紹介 コラム グループ概要 採用情報 お問い合わせ 日本人にPR

コンサルティング リサーチ セミナー 経済ニュース 労務顧問 IT 飲食店情報

第93回 観光と日台アライアンス


ニュース その他分野 作成日:2015年2月10日_記事番号:T00055397

台湾経済 潮流を読む

第93回 観光と日台アライアンス

 2014年の台湾からの訪日客数は前年比28.0%増の延べ283万人に達し、韓国(275万5,000人)を抜き、第1位となった(表参照)。実に台湾の8.3人に1人が昨年日本を訪れた計算となる。円安による購買力の向上により、台湾人観光客の旅行消費額も前年比17.5%増の3,544億円に達した(中国人観光客の5,583億円に次ぎ第2位)。

訪日客増加を実感

 個人的な経験に照らしても、台湾人の知人・友人の訪日は増えた。昨年12月に台湾に出張した際には、アポ入れの段階で、2人の台湾人研究者に「その時は日本に旅行中だから」という理由で面談を断られた。出張中には、台湾経済研究院(台経院)在籍時代のルームメートと台北で会ったところ、日本旅行を企画中だから同行できるかと聞かれ、その翌日、偶然ホテルの近くの「自助餐」(ビュッフェスタイルの定食屋)で10年ぶりに会った台経院の別の知人に「最近どう?」と聞いたところ、「来週から東京に遊びに行くの」とウキウキした様子。さらに、羽田への帰国便では、旧知の台湾人通訳者の方と偶然同じ便に。ご主人と東京で観光するとのことだった。つい先日電話で話した台湾人の研究者は、部内旅行で3月に北海道に行くと言っていた。

 こうした観光客の増加が日台間の産業協力に直結するかといえば、多くは期待できないとの辛口の意見も聞かれる。ただし、観光を通じた日本での新たな製品、サービスとの出会いがアライアンスの契機になる可能性はないとはいえない。問題は、その確率をどう引き上げるかだろう。既に取り組まれていたり、筋違いとなってしまう可能性もあるのだが、門外漢なりに、この問題について今回のコラムでは考えてみたい。

「産業観光」をビジネスに

 13年頃から、日本貿易振興機構(ジェトロ)が日本全国の事務所のネットワークを通じて、海外からの観光客を積極的に受け入れている日本企業・工場などの情報を英文で公開している(http://www.jetro.go.jp/en/ind_tourism/ )。こういった「産業観光」の情報提供をさらに充実させ、台湾国語(繁体字中国語)でみられるようにしたり、台湾のメディアとのタイアップを増やしたりしてみてはどうだろうか。台湾からの来場者が増え、それが台湾の人材の確保や新たな商機発掘につながるかもしれない。むろん「産業観光」をビジネスに生かすためには、中国語や英語でのアンケート回収やこれらの言語を解する人員の配置などのコストはかかるが、試みる価値はあるように思われる。

 日台の「産業観光」を行っている企業同士の連携はどうだろうか。台湾においても「産業観光」は広がりをみせている(http://travel.network.com.tw/tourismFactory/ )。江ノ島電鉄(神奈川県)・台湾鉄路(台鉄)平渓線(新北市)の乗車券交流、東京スカイツリーと台北101の相互誘客など観光面での日台連携が行われているが、「産業観光」でも日台連携による相互誘客を試みてもよいのではないだろうか。日本を参考に「六次産業化」に力を入れていこうという機運が台湾にはあるし、日本企業からみても、台湾の人々が好む「産業観光」のスタイルを学習する機会になるかもしれない。

 円安という環境下、台湾人観光客の流入継続が期待できる今は新たな試みの好機といえる。読者の中には、春節(旧正月)休暇で日本に帰国される方も多いだろう。その際に、台湾からの視線で日本を眺めつつ、新たな取り組みについて思いを巡らせてみてはいかがだろうか。

みずほ総合研究所 アジア調査部中国室長 伊藤信悟  

台湾経済 潮流を読む