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第72回 中国大陸への人材の派遣について


ニュース その他分野 作成日:2015年2月25日_記事番号:T00055541

KPMG 分かる台湾会計

第72回 中国大陸への人材の派遣について

 今回の本コラムでは中国大陸への人材の派遣に関して取り上げたいと思います。近年、台湾と中国の経済的なつながりが進んでおり、多くの台湾人が中国で就労していると言われています(中国で就労する台湾人の数は2014年4月時点で約85万人)。その中には、台湾企業から中国の企業へ出向という形で派遣されている方も含まれています。台湾企業から中国へ人材を派遣する場合、派遣対象者の人件費の負担関係や派遣対象者に対する指揮命令権の所在などによって、台湾および中国での課税関係に影響を与える可能性があります。

 そこで今回の本コラムでは、台湾企業から中国に人材を派遣する場合の課税関係について、簡単ではありますが考えてみたいと思います。

1.台湾企業が負担する派遣対象者の人件費

 派遣対象者の人件費を派遣元である台湾企業が負担する場合、当該台湾企業にとって当該人件費を営利事業所得税上、損金算入できるかという論点があります。

・派遣対象者の中国での業務が派遣元企業である台湾企業の事業や収益に貢献している場合、当該派遣対象者の人件費を派遣元企業である台湾企業が負担することに合理性があると考えられます。

・他方、派遣対象者の中国での業務が派遣元企業である台湾企業の事業や収益に貢献していると言えない場合、当該派遣対象者の人件費を派遣元企業である台湾企業が負担することに合理性があると言えず、損金算入が認められない可能性があります。

 実務的な事例としては、台湾企業から中国へ台湾人が派遣され、台湾での社会保険料を台湾企業が負担しているケースが挙げられます。このようなケースにおける当該保険料について台湾企業が損金計上するためには、派遣対象者の業務が台湾企業の収益に貢献していると言える必要があります。台湾企業が給与などを負担している場合も同様であり、近年、台湾での国税局調査では台湾企業が負担する中国へ派遣される人材の人件費の損金算入の否認事例が散見されていると言われています。

2.PE認定による中国での法人税

 ご存じの方も多いかと思われますが、中国では外国企業から派遣された人材の活動が一定の条件を満たす場合には、当該外国企業は中国でのPE(注)を認定され、法人税を課税される可能性があります。

 中国でのPEの認定ルールについては、13年4月に「国家税務総局公告第19号」(以下、「19号公告」)が公表されており、どのような場合に外国企業に納税義務が発生するかに関してガイドラインが提供されています。

 19号公告では、外国企業が人員を中国企業に派遣し、中国で役務提供させる場合に下記2つの条件(以下、「基本基準」)を同時に満たす場合には、外国企業が中国においてPEを有して役務を提供しているものと認定するとしています。

(注)
PE(Permanent Establishment)とは、企業が継続的に事業活動を行う場所であり、例えば支店がこれに該当します。中国にPEを有していない限り、台湾企業等の外国企業が中国で法人税の課税を受けることはありません。中国税務当局が外国企業に法人税を課税することができるのは、これら外国企業が中国にPEを有している場合に限られます。

「基本基準」

・派遣元企業が出向者の作業結果の全部または一部について責任およびリスクを負担していること。

・派遣元企業が出向者の業績の評価を行っていること。

 また、上記基本基準に加え、出向者が派遣元企業の実質的な従業員であるか否かを判断する要素として、下記の「参考基準」が設けられています。

「参考基準」

・受入企業が派遣元企業に管理費あるいはサービスフィーの性質を有する対価を支払うこと。

・受入企業が派遣元企業に支払う金額が派遣元企業が立て替える出向者の給与、社会保険料、その他の費用を上回ること。

・派遣元企業が受入企業から受け取る対価の全額を出向者へ支給せず、一部を自社に留保すること。

・派遣元企業が支給する出向者の給与等に対して中国で個人所得税が納税されていないこと。

・派遣元企業が出向者の人数、職位、給与基準および中国での勤務場所を決定していること。

 「参考基準」は「基本基準」の2要件を満たすか満たさないかを判断する補足的な基準と考えられますが、中国の受入企業が台湾企業へ何らかの報酬を支払うことで「基本基準」を満たしていると判断される場合、台湾企業は中国でPEを認定され、中国で所得税を課税される可能性があります。

3.まとめ

 台湾企業が中国へ人材を派遣し、当該人件費を負担してこれを損金計上するためには、台湾企業としては当該派遣人員の業務が台湾企業の収益に貢献していることを説明できることが肝要であると考えられます。

 また、派遣対象者の業務が台湾企業の収益に貢献していると言えないケースもあろうかと思われます。このような場合、派遣対象者の人件費の負担関係や台湾企業の中国でのPE認定リスクについてはスキーム全体の観点から検討する必要があろうと考えられます。

 本件に係るより詳細な情報につきましては、顧問会計事務所等にお問い合わせの上、業務にお役立ていただけますと幸いです。本稿に関するお問い合わせは、以下までお願いいたします。

KPMG安侯建業聯合会計師事務所
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