ニュース その他分野 作成日:2015年5月20日_記事番号:T00057059
KPMG 分かる台湾会計ご存じの方もいらっしゃると思われますが、今年2月、労働基準法が改正されました。改正は幾つかの条文に関して行われていますが、中でも「退職金の外部拠出積立金残高の最低基準」(同法第56条第2項)の新設は企業の財務および損益に影響を与える可能性があると考えられます。そこで、今回の本コラムでは労働基準法の改正、中でも退職金に係る積み立てについての情報をお伝えしようと思います。
1.第56条第2項の新設
労働基準法に基づく退職金制度はいわゆる「旧退職金制度」であり、確定給付型の退職金制度(注1)に当たります。当該退職金制度に関して、従来、企業は当該従業員の給与の一定の割合(2%から15%)に相当する金額を毎期台湾銀行の専用口座へ拠出する義務があるとされていました(同法第56条)。
今回の改正により、毎年12月末時点における外部拠出積立金残高が翌1年間に退職金受領資格を得る従業員の退職金要支給額(注2)に満たない場合、企業は翌年の3月末(3カ月後)までに当該積立不足額を外部拠出しなければならないこととされました。積立義務違反がある場合、過料が科されます。
なお、労働基準法に基づく旧退職金制度は2005年7月1日以降入社の従業員には適用されません。
(注)
1)確定給付型退職金制度は、将来従業員が退職する際の退職給付額を約する制度であり、外部への積立不足がある場合、企業が積立不足を補塡(ほてん)する義務があります。
2)退職金要支給額などの具体的な計算方法については、15年4月現在労働部にて検討中とされており、後日、適用細則などとして公表される可能性があります。
2.財務・会計上の影響
第56条第2項の新設により、企業は毎年12月末に翌年度12月末において退職金受給資格を有する従業員の退職金要支給額を計算し、外部拠出額に積立不足がある場合、翌年3月末までに外部拠出する必要があります。
また、会計上は、旧制度に係る退職金給付を現金主義によって会計処理する企業(外部拠出時の拠出額を費用処理する企業)で、外部積立金が退職金要支給額に比べて少ない場合、一時の費用が発生すると考えられます。
3.税務上の影響
所得税法上、企業が旧退職金制度に基づいて外部拠出する金額のうち損金算入できる金額は旧制度対象の従業員の年間給与の15%を限度とされています。そのため、第56条第2項の新設による積立不足額の外部拠出により外部拠出額が年間給与の15%を超える場合、当該超過部分は現行所得税法上では損金不算入とされる可能性があります。
なお、税法上の取り扱いについては、今後、本労働基準法の改正を踏まえた改正などが行われる可能性があります。
4.設例
本法第56条第2項を設例を用いて解説すると下記の通りです。なお、具体的な計算は今後当局より指針などが発行され、下記と異なる可能性があります。
15年12月末において、A社には旧退職金制度の対象となる従業員20人が在籍する。このうち、16年12月末において退職金受給資格を有するのは15人となる予定である。当該15人の15年(あるいは16年)12月末における退職金要支給額総額は1,000であるが、15年12月末においてA社が台湾銀行の信託口座に積み立てている金額は800である。A社の会計年度は3月末であり、従業員退職給付を現金主義によって会計処理している。
この場合、A社には15年12月末時点において200の積立不足額があることとなり、16年3月末までに200を台湾銀行信託口座へ拠出する必要がある。これによってA社の会計上は15年度に200の退職給付費用が計上される。
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