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第80回 移転価格調査の拡大


ニュース その他分野 作成日:2015年10月21日_記事番号:T00059916

KPMG 分かる台湾会計

第80回 移転価格調査の拡大

 台湾で移転価格報告書が義務化されたのは2005年で、今年ではや10年になります。移転価格に対する国税当局の調査も8年が経過し、国税当局の経験と調査実績も積み重ねられてきました。世界に目を向ければ、OECD(経済協力開発機構)が欧米の大手企業による低税率国の関係会社を利用した税回避行為に対する対策として、今年、多国籍企業の税逃れを防ぐ新たなルールを発表しています。世界的に移転価格税制が注目されている昨今ですが、今回は「台湾国税当局のこれまでの調査状況」をご紹介するとともに、今後の「移転価格調査の拡大方針」をご説明します。

1.国税当局のこれまでの調査状況

 台湾の移転価格税制では、年間売上高3億台湾元以上の会社で、関係者取引の金額が2億元以上の場合に移転価格報告書の作成義務があります。移転価格報告書は営利事業所得税の確定申告時に「用意すること」とされており、その時点では提出までは求められていません。国税当局が移転価格の調査を行う際に事業者に通知し、事業者は調査書が届いた日から1カ月以内に移転価格報告書を税務機関に提出する必要があります。

 弊事務所への依頼案件のうち、10年度から12年度に税務機関から移転価格報告書の提出を求められた会社の割合は、台湾系企業で62%、日系企業で30%となっています。そのうち、移転価格報告書の提出後、実際の移転価格調査が行われた比率は台湾系、日系ともに30%程度となっています。こう見ますと、制度対象の日系企業の約1割は実際に移転価格報告書の調査が行われていると考えられます。また、移転価格調査が行われた会社のうち、約半数が移転価格を調整する結果となっています。当然ながら税務当局は調整の可能性が高い企業に照準を合わせているものの、調査が実施された企業ではかなりの高い確率で移転価格調整が行われるとみることができます。

2.移転価格調査の拡大について

 今年9月の財政部北区国税局が発表したプレスリリースによると、16年より移転価格調査が拡大される予定です。計画によると、年間売上高が10億元以上で、かつ独立企業原則に適合しない形態(例:親会社または子会社が租税回避地(タックスヘイブン)に設置されているなど)である場合、即時調査対象として選定されます。台湾全体で少なくとも300社以上の多国籍企業が調査対象になると見込まれます。

 国税局が制定した調査選定条件では、よく見受けられる多国籍企業による租税回避の7つの方法を図の通り定めています。

 移転価格については、関係会社取引が多い企業では今までも気に留めていたと思われますが、今後は調査の拡大が見込まれるので、今まで以上に注意が必要になってきています。移転価格税制は関係会社の利益との表裏の関係で、台湾法人の利益を増やせば相手先の関係会社の利益が下がり、その国での移転価格調整リスクが高まりますので、台湾法人だけでなく企業グループ全体の視点で、親会社主導で検討する必要があります。

 本件に係るより詳細な情報につきましては、顧問会計事務所などにお問い合わせの上、業務にお役立ていただけますと幸いです。本稿に関するお問い合わせは、以下までお願いいたします。

KPMG安侯建業聯合会計師事務所
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