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第76回 会社法第235条関係(員工紅利)の改正について


ニュース その他分野 作成日:2015年6月17日_記事番号:T00057595

KPMG 分かる台湾会計

第76回 会社法第235条関係(員工紅利)の改正について

 端午節が近づいて夏らしい天候が増えてきましたが、2016年の総統選挙を控え、総統選候補者選びが大詰めを迎える時期でしょうか。

 さて、来年の総統選挙対策かどうかは分かりませんが、立法面では労働者保護を目的とする幾つかの法改正が行われました。前回の本コラムでは「労働基準法の改正について」をお伝えしましたが、5月には会社法が一部改正されました。本コラムは会計に関するコラムですが、改正会社法には会計に関する部分が含まれるため、今回はこの改正会社法を取り上げたいと思います。

 ご存じの方が多いと思われますが、台湾の会社法には会社の利益の一部を従業員へ還元させるという制度(「員工紅利」、日本語では「従業員特別配当」など)がありました。これは株主への利益配当に対する一定割合の金額を従業員へ配分するという制度でしたが、今回の会社法の改正により、本制度が改正されました。

1.改正の内容

 旧会社法では、株式会社は株主に利益を配当する際に、定款で定める一定の率に基づく金額を従業員へ分配する必要があるとされていました(旧会社法第235条2項)。

 今回の改正により当該条項が削除され、代わって株式会社はあらかじめ一定の金額あるいは一定の率を定款に定め、当期に獲得された会計上の利益の一部を従業員へ分配する必要があることとされました(改正会社法第235条の1)。

 今回の改正により、株式会社は株主への配当の有無によらず当期に利益が得られた場合(欠損金がある場合は欠損金補塡(ほてん)後なお利益がある場合)、その利益の一部を従業員へ分配する必要があることとされました。

2.14年会社法改正案との関係

 会社法改正案は14年1月から立法院で協議され、その内容に関しては本コラムの第60回および第61回の2回にわたりお伝えしました。14年1月の立法院上程時の改正案では、「従業員特別配当」の制度そのものが廃止される内容でしたが、今回の改正では事実上存続する内容として成立しています。

3.改正による会社への影響

 改正によって企業は利益の一部を従業員へ還元する必要がありますが、従前の「従業員特別配当」制度から定款に定める一定率に制限がないなどの理由から、特に日系企業では当該一定率を名目的な低率で定める例が多く、本改正による日系企業の財務・会計上の影響は限定的であろうと考えられます。ただし、従前の「従業員特別配当」に基づく定款規定の見直し、変更が必要になる可能性がありますので、ご留意ください。

 なお、本改正会社法は5月20日の総統の署名から施行されています。

4.会社法の新旧対照表は以下の通りです。

 本件に係るより詳細な情報につきましては、顧問会計事務所などにお問合せの上、業務にお役立ていただけますと幸いです。本稿に関するお問い合わせは、以下までお願いいたします。


KPMG安侯建業聯合会計師事務所
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