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第45回 国民党資産、来年いよいよ清算か


ニュース 政治 作成日:2015年12月18日_記事番号:T00061036

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第45回 国民党資産、来年いよいよ清算か

 1月16日の総統・立法委員選挙まで1カ月を切った。蔡英文民進党主席をサポートする蘇嘉全・選挙対策本部総幹事は13日、民進党は立法委員選挙で54〜64議席の獲得が可能との見方を示した。全113議席の過半数、57議席を上回ることは依然有望とみているようだ。蔡主席は先月、過半数が実現した場合、国民党資産(党産)の清算を必ず推進すると言明した。来年は「台湾民主主義の恥部」とも称される、国民党資産の清算問題が重要な政治的イシューに持ち上がる公算が高まっている。

新竹県の年間予算に匹敵

 「世界一の金持ち政党」の異名を持つ国民党の財力は台湾政界で群を抜いており、同党の2014年度財務報告書によると資産総額は約255億7,000万台湾元に上り、新竹県の年間予算に匹敵する。

 資産の9割以上は党営事業の「中央投資」「欣裕台」という2つの投資事業体で、昨年は両社による投資利益10億2,000万元が党の収入全体の65%を占めた。国民党は07年、当時の民進党・陳水扁政権の政治改革で党営事業が問題視されたことから両事業体の経営を信託したが、現在に至ってもその収入で党運営の多くを賄っているのだ。両事業体が国民党にもたらす利益だけで、台湾の300近い他の全政党の収入総額の2倍以上に上るという。

処分完了を宣言も

 国民党資産は、かつての日本資産の接収や政府資金の私物化、以前の党営企業による特定分野の独占的支配、行政命令を利用した不動産取得など、不適切な手法によって形成された部分が多い。

 このため陳政権への交代後、問題資産の返還を求める動きが始まり、国民党も監察委員や国有財産局に指摘された計229件について不動産を地方自治体に返還するなど処分を進め、今年8月には朱立倫主席が「既に問題資産はない」と処分完了を宣言した。

 しかし、前述の党営事業の清算は終わっておらず、党資産を利用して巨額の利益を得る行為も依然やり玉に挙がっている。近年では、国民党副主席である郝龍斌前台北市長が在任中、党機関紙・中央日報のビルを取り壊した代わりに台北駅付近の一等地を党に与え、同地で高層ツインビル「双子星大楼」開発計画を推進して40億元以上の含み益をもたらしたとされる問題がある。また、90年に国有財産局から低価格で購入した旧党本部ビルを06年に6倍以上の23億元で売却した事実があり、こうしたケースにもメスを入れない限り党資産問題は終わらないとの声も聞かれる。

立法化が現実に

 国民党資産が最も悪影響を及ぼしているのは、政党間の公正な競争を阻害する点だ。12年の立法委員選挙において、民進党が候補者に支給した補助金は総額580万元。これに対し国民党は1億5,645万元と実に27倍に上る。財力によって広告の大量買いや、集会・イベントへの動員を可能にしてきた。票の買収資金になっているとの疑念も根強い。


国民党本部正面には「革新・民主・公義のために」の標語が掲げられている。「公義」こそが党資産問題で同党に求められる姿勢だ(YSN)

 民進党はこの問題の解決策として、陳政権時代に「政党法」と「不当党産処理条例」の立法化推進を決めた。政党法は、政党に政治的目的の実現を目指す本来の役割のみを担わせることを目的とし、収入を党費や合法的な献金に限定させ、営利事業や不動産の購入を禁止するものだ。不当党産処理条例は、国民党に一党独裁時代に特権的に取得した党資産を国家に返還するよう求める特別立法だ。

党勢弱体化に懸念

 国民党はこれまで立法院で過半数を維持し続けてきたたため、両法案の成立を阻止できた。しかし、民進党が初の過半数を実現すれば成立が現実のものとなり、党営事業からの収入は見込めなくなる。現有資産に対しても徹底的な洗い出しが行われるはずだ。

 国民党が財力を失えば、有力支援者を金銭で取り込むといった旧来の手法は困難になり、私欲で動く支持層が減る。統一派から台湾重視の現状維持派まで幅広い層で構成された同党にとって、本来の政治活動のみへの取り組みを求める政党法は、分裂を促すベクトルとなるかもしれず、うまく体質改善を図らなければ勢力が弱体化する懸念がある。国民党資産の清算は台湾の政治環境に大きな変化をもたらす可能性を持っており、どのような展開となるのか立法委員選の結果とともに注目したい。

ワイズニュース編集長 吉川直矢

 

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