第47回  再起か衰退か、岐路に立つ国民党


ニュース 政治 2016年1月29日

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第47回  再起か衰退か、岐路に立つ国民党

記事番号:T00061774

 総統・立法委員選挙で惨敗し、朱立倫主席が辞任した国民党は、3月26日に新主席を選ぶ補欠選挙を行う。今週27日が立候補届け出書類の交付締め切りで、洪秀柱副主席(立法院副院長)、黄敏恵代理主席、陳学聖立法委員(桃園市)、李新・台北市議会議員ら6人が書類を受け取った。当初名前が挙がっていた呉敦義副総統、郝龍斌副主席(前台北市長)、胡志強副主席(前台中市長)らは出馬を見送り、王金平副主席(立法院長)ら大物が相次いで立候補を辞退した結果、もともと不利だった情勢をさらに悪化させた、昨年の総統選での候補者選定過程が想起された。危機において実力者が立ち上がらないようでは党の将来は暗い。

 総統選挙での得票数は蔡英文民進党主席の689万票に対し、朱立倫国民党主席と宋楚瑜親民党主席の泛藍(汎国民党陣営)合計は539万票で、両陣営の票差は150万票だった。民進党は前々回2008年には国民党に221万票差で敗れており、国民党にとって再起が困難になるほどの敗れ方ではない。国民党は今回、前回12年からは約300万票減らしており、台湾の選挙分析を長年手掛けてきた洪永泰・元台湾大学政治系教授はその内訳について、▽棄権、150万票(50%)▽親民党に投票、120万票(40%)▽民進党に投票、30万票(10%)──と分析している。一方、民進党が前回から増やした約80万票は、今回初めて投票した新たな有権者からが50万票、前回国民党に投票した有権者からが30万票との読みだ。

 すなわち、泛藍と泛緑(汎民進党陣営)の支持層規模にそれほど大きな変化はなく、民進党支持の若者層も、選挙を左右するほどの規模には成長していないとの見方だ。国民党寄りの中国時報は17日付で、「民進党政権がうまくやれなければ、人々は国民党政権時代の安定した日々を懐かしみ、4年後か8年後に再び政権交代を選択するはずだ」と再起は可能との論調を掲載した。

「中国寄り」では先細り

 08年と16年の政権交代の最大要因は与党の実績に対する不満であり、中国時報の指摘は首肯できる。ただ、国民党による再度の政権奪回は、分裂せず、組織としてまとまりを保つことが最低限の前提となろう。立法院の3分の1、35議席の少数野党に転落した同党にとって、選ぶべき路線が大きな課題となっている。

 選挙敗北後、若手党員らが「草協聯盟」という改革グループを立ち上げ、「中国国民党」の党名の「国民党」への変更検討や、台湾主体性に関するテーゼを増やす路線修正を主張した。背景には無論、若い世代の台頭とともに台湾意識が強まる中、「中国寄り」では党勢の先細りが目に見えていることがある。「三民主義」などの国民党教育を詰め込まれずに育った今の若い世代には、国民党の核心思想である「民主、自由、均富の統一中華の実現」など支持しようがないのだ。国民党は「台湾寄り」へと軌道修正を図らない限り、有権者の世代交代とともに選挙で不利になっていくことは明白だ。

新主席の人選は重要

 一方、有権者が同党を支持する理由となってきた「安定した中台関係」は、中国と対話できる「中国国民党」として実現してきたため党名変更は現時点で困難だ。台湾本土派と中華民国原則派が分裂して別政党を立ち上げれば、勢力縮小で政権奪回が困難になる。これらのジレンマを抱えた中、3月に決まる新主席の人選は極めて重要だ。中国国民党の党名を維持して団結を図りつつ、「台湾寄り」すなわち本土化へとかじを切っていく以外に選択肢はないと思う。

 国民党は、民進党を苦境から救ってきた蔡主席のような存在を欠いていることも苦しい。人材不足は馬英九総統による後継者育成失敗の弊害で、新主席が十分リーダーシップを発揮できなければ混乱が広がる恐れもある。


新北市長の職務に戻った朱立倫前主席(左)。ニューリーダーとして期待されたが、馬総統に頭を抑えられた結果、中央政府で手腕を発揮することなく終わってしまう可能性が出てきた(中央社)

 同党は初めて野党を経験した陳水扁政権時代、当時は声望の高かった馬主席の下、政権復帰を目指して緊張感を保っていた。当時と同じように組織立て直しが可能なのか、混乱して衰退していくのか、はたまた分裂に向かうのか、今年の台湾政界の最大の見どころに違いない。

ワイズニュース編集長 吉川直矢

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