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15年10大ニュース!【1位】経済不振の1年、レッドサプライチェーンの脅威顕在化


ニュース その他分野 作成日:2015年12月29日_記事番号:T00061224

月間5大ニュース

15年10大ニュース!【1位】経済不振の1年、レッドサプライチェーンの脅威顕在化

 行政院主計総処によると、2015年の台湾の域内総生産(GDP)予想成長率は1.06%で、金融危機の影響でマイナス成長となった2009年以降で最悪となることが確実だ。台湾経済の屋台骨である輸出は、2月から11月まで10カ月連続で前年割れとなり、特に6月以降は2桁減のトンネルが続く惨状で、成長率を押し下げる最大要因となっている。


紫光集団の趙偉国董事長(左)は中国企業の資金力を象徴する存在だ。年末の2カ月間、台湾半導体業界はこの人物の発言に揺れ続けた(紫光集団リリースより)

 輸出不振は、中国経済の不調や原油安、電子業界の在庫調整といった世界的な環境悪化によるものだ。最大の輸出先である中国(香港を含む)向けは1〜11月で前年同期比11.9%減少した。また、輸出品目では石油精製品が42.8%減と著しい落ち込みを見せ、原油安の影響が深刻であったことを明示した。

 8月下旬の世界同時株安以降、電子業界を中心に無給休暇を実施する企業が相次ぎ、ピークの11月には50社、対象人員5,437人に上った。スマートフォンの宏達国際電子(HTC)が全社員の15%の解雇を発表したのをはじめ、▽晶元光電(エピスター)▽中環(CMCマグネティクス)▽瀚宇彩晶(ハンスター)▽中強光電(コアトロニック)──など大手企業が人員削減を実施した。中華映管(CPT)は2,500人以上を対象に無給休暇を断行した。

液晶パネル出荷、中国勢に抜かれる

 電子業界の不振は、中国で形成された紅色供給網(レッドサプライチェーン)の脅威が高まったことも要因だ。中国液晶パネル企業の台頭によって、台湾製液晶パネルの対中輸出が減少する傾向は3年ほど前から生じていたが、今年は友達光電(AUO)、群創光電(イノラックス)の台湾2社が、テレビ用大型パネルの単月出荷枚数で、京東方科技集団(BOEテクノロジーグループ)や深圳市華星光電技術(CSOT)の中国大手に初めて追い抜かれる現象がみられた。BOE、CSOTは今後、中国国内に最先端の大型工場を稼働させる計画で、台湾経済の支柱の一つである液晶パネル産業は、今後の競争力維持に懸念が強まっている。

紫光集団、相次ぐ攻勢

 レッドサプライチェーンの脅威を最も端的に表したのが、中国国有半導体大手の紫光集団だった。趙偉国・同集団董事長は10月以降、パッケージング・テスティング(封止・検査)台湾2位の矽品精密工業(SPIL)の他、南茂科技(チップモス・テクノロジーズ)、力成科技(パワーテック・テクノロジー、PTI)に24.9%の出資を行う宣言した他、聯発科技(メディアテック)に対する合併意向も表明した。

 相次ぐ攻勢に台業半導体業界が飲み込まれてしまうとの危機感が高まり、立法院は18日、IC設計産業への中国企業による投資を現時点では解禁しないこと、紫光集団による出資計画の影響評価を立法院に報告するまでは経済部に認可を見合わせるよう求める決議を行った。

 いったんは紫光集団の攻勢を止めたものの、中国勢が資金力と市場成長力を背景に、台湾が長期にわたって成長の原動力としてきた電子産業を脅かし始めた現実に変わりはない。今後の中台関係にも影響する問題であり、台湾はどのような対応を選択すべきなのか熟慮が求められている。

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