ワイズコンサルティング・グループ

HOME サービス紹介 コラム グループ概要 採用情報 お問い合わせ 日本人にPR

コンサルティング リサーチ セミナー 経済ニュース 労務顧問 IT 飲食店情報

第87回 退職積立追加拠出期限近づく


ニュース その他分野 作成日:2016年3月9日_記事番号:T00062376

KPMG 分かる台湾会計

第87回 退職積立追加拠出期限近づく

 昨年5月にこのコラムで労働基準法改正の解説をいたしました。いわゆる「旧退職金制度」に関する外部積立口座への追加拠出規定です。この追加拠出の期限が今月(2016年3月)末に迫ってきました。今回は、改正の内容を再確認するとともに、関連規定および制度課題についてご説明します。

1.15年労働基準法の改正内容

 従来の労働基準法において、企業は旧退職金制度の従業員について、月給の2~15%の範囲内で労働者退職基金を台湾銀行の専用口座に毎月拠出すればよいとされていました。これが、15年2月の改正により、毎年12月末時点における積立金残高が翌年12月末における退職金受給資格を有する従業員の退職金要支給額に満たない場合、不足額を翌年3月末までに外部拠出することとされました。16年3月末が最初の追加拠出の期限になります。

2.追加拠出金の損金算入の可否

 税務上、企業の退職金拠出額の損金算入限度額は従業員給与の15%とされているため、当該追加拠出によって従業員給与の15%を超過する場合に、その超過金額の損金算入の可否が議論となっていました。この点について、15年11月に財政部より解釈通達が公表され、当該拠出額は拠出年度に全額損金算入することができ、従来の退職金損金算入限度額に含める必要がないことが明確になりました。

3.罰則規定

 当該労働基準法改正に従わず、16年3月末までに不足額を追加拠出しない場合は、9万元から45万元の罰金が科されるという罰則規定があり、またその企業名も公表されるといわれています。16年3月末以降主務機関(台北市であれば労働局)は、台湾銀行および労工保険局より管轄下の会社の拠出額および労働者の情報を収集し、拠出不足があると考えられる会社に対して問い合わせを行い、その結果によって罰金を科すことになると思われます。

4.当該制度に対する企業の反応

 従業員は退職金受給資格を有したらすぐに退職するわけではなく、実際の退職者は徐々に発生すると考えられます。一方、今回の要求が、退職金受給資格を有する従業員全員の退職金要支給額の全額一括拠出であるため、企業にとっては不必要に多額の資金が固定化されることになることから、企業の通常の事業活動にも影響を及ぼしかねず、不合理な制度であるとの批判が企業から聞かれます。しかしながら、当該制度に関する見直しは行われておりません。

まとめ

 台湾における日系企業においても40年を超える社歴を有する会社があり、平均勤続年数や従業員数にもよりますが、億単位の金額の拠出が必要になる会社もあると聞いています。当該改正には批判の声も聞こえますが、従来、ほとんどの企業が下限の2%のみしか拠出しておらず、企業倒産時には、積立不足のため退職金が支払われないケースもあったことから、従業員保護の観点からは必要な改正かもしれません。各企業は追加拠出か罰則を受けるかの選択が迫られます。

 本稿に関するお問い合わせは、以下までお願いいたします。

KPMG安侯建業聯合会計師事務所
日本業務組
Mail:kojitomono@kpmg.com.tw
TEL:886-2-8101-6666
友野浩司(内線06195)
奥野雄助(内線14735)
石井顕一(内線15359) 

KPMG 分かる台湾会計