ニュース その他分野 作成日:2016年3月30日_記事番号:T00063293
KPMG 分かる台湾会計BEPSという言葉を聞いたことがありますでしょうか。経済協力開発機構(OECD)で議論されている国際課税の適正化プロジェクトです。この中で移転価格報告に関する新たな文書要求が規定されています。今回は日本と台湾のBEPS対応状況および移転価格文書化に対する影響をご紹介いたします。
1.BEPSとは
日本語では税源浸食と利益移転(Base Erosion and Profit Shifting)プロジェクトと言われています。大手グローバル企業による各国の課税制度の違いを利用した租税回避行為が問題視され、OECDがグローバル企業の行き過ぎた節税を防ぐために示している行動計画です。2015年10月5日にBEPS行動計画の最終パッケージが公表され、各国では順次法制化が進められています。
2.BEPSによる移転価格に関する文書化要求
BEPS最終パッケージの一つにおいて、移転価格の文書化に関するルールが示され、グローバル企業は3種類の文書(国別報告書、マスターファイルおよびローカルファイル)を税務当局に提供(または作成・保存)しなければならないとされています。国別報告書は7億5,000万ユーロ以上の連結売上高を有するグローバル企業に要求され、グループの事業体が所在する国別の所得額・納税額などを記載する文書です。マスターファイルとはグループ全体の基本情報や事業活動、移転価格ポリシーなどを記載したグループの全体像を示す文書です。ローカルファイルとは各国の個々の企業取引、経済分析を記載した文書(台湾における移転価格報告書とおおむね同じ)です。
3.日本における法制化
16年度の税制改正において上記の3種類の文書にかかわる規定が今年度の税制改正大綱に含まれ、この3月中に国会で可決される見込みです。国別報告書およびマスターファイルについては連結売上高が1,000億円以上のグローバル企業に16年4月1日以後に開始する事業年度から提出が要求されます。提出期限は会計年度終了日から1年とされています。
ローカルファイルについては17年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます。一つの国外関連者との前期の取引金額(受払合計)が50億円以上または無形資産取引額(受払合計)が3億円以上の場合には、当該取引について作成義務が生じます。確定申告書の提出期限までに作成し、7年間の保管義務があります。文書化義務を担保するために、国税当局の提出要求から45日を超えて未提出の場合の推定課税規定があります。作成義務のない国外関連取引についても、国税当局からローカルファイルに相当する資料などの提出要求がなされる可能性があり、60日を超えて未提出の場合の推定課税規定があります。
4.台湾における対応
台湾はOECDの加盟国ではありませんが、オブザーバーとして参加しています。現状、BEPSに基づいた具体的法案はまだありません。しかし、財政部においてBEPSの内容が積極的に検討されており、近いうちにOECDのパッケージに準拠した法制定が進むものと考えられます。
5.日系台湾子会社への影響
日本親会社に国別報告書およびマスターファイルの提出義務がある場合、その作成のための情報を親会社に提供する必要が生じます。また、日本側で作成が必要となるローカルファイルにおいて、台湾子会社との取引が対象となる場合、もしくは文書化義務が免除されている台湾子会社との取引について事前にローカルファイルに相当する資料などの準備を行う場合には、それらの文書と台湾で現在作成している移転価格報告書との整合性の確認が必要と考えられます。その結果、台湾の移転価格報告書の内容の修正の検討、場合によっては移転価格課税リスクの回避の観点から、台湾子会社との移転価格方針の見直しが必要となる可能性もあります。
まとめ
台湾においては05年より移転価格報告書の作成が義務化されていたため、その面では日本より進んでいましたが、このBEPS対応により日本の方が大きく進みます。台湾だけがBEPS対応をしない場合、課税面で他国より不利になる状況が考えられるので、台湾においても早急な法整備が予想されます。BEPS対応に関しては、各国の法整備の最新の状況を入手し、早めの対応が必要になってくると思われます。
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