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第90回 従業員の残業代の個人所得税の取り扱い


ニュース その他分野 作成日:2016年5月4日_記事番号:T00063942

KPMG 分かる台湾会計

第90回 従業員の残業代の個人所得税の取り扱い

 従業員が定時を超えて残業することは好ましくはありませんが、至極一般的なことだと思います。日本では、残業により従業員が取得する残業代も、給与所得の一部として個人所得税の課税対象になります。しかし台湾では一定の残業代は個人所得税の課税が免除されています。今回は台湾の残業代の免税規定について解説します。

残業代の免税規定

 労働基準法および所得税法の規定により、従業員の1カ月における平日の46時間までの残業代は所得税の課税対象にはなりません。また、祝日、定休日および有給休暇(以下、休日とする)については、平日の残業時間とは別に、1日につき8時間の残業代が所得税の課税対象になりません。休日の1日につき8時間を超える残業分については平日の免税残業時間数に余裕があれば、46時間の範囲まで所得税の課税対象になりません。少し計算が複雑なため、次に2つの例を記載します。

事例1

 従業員の当月の平日の残業時間数が49時間、休日に1日9時間の残業をした場合の残業代の免税範囲および課税範囲は表1の通りになります。

/date/2016/05/04/colum1_2.jpg

事例2

 従業員の当月の平日の残業時間が42時間で、休日2日間の残業時間がそれぞれ9時間と12時間の場合の免税範囲および課税範囲は表2の通りになります。

/date/2016/05/04/colum2_2.jpg

*休日残業時間のうち1日8時間を超える時間(9-8)+(12-8)=5
平日残業時間が46時間を4時間下回る(46-42)ため、上記5時間のうち4時間は免税対象となり、残りの1時間のみが課税対象となる。

注意点

 労働基準法規定の勤務時間は、1日8時間、1週間40時間となっています。当該勤務時間を超過した場合には残業となり、2時間以内の残業は通常賃金の3分の1以上を加算、その後の2時間は通常賃金の3分の2以上を加算することとされています。また、休日勤務は、別途通常賃金の1倍を加算することとされています。上記免税規定は通常賃金部分および加算分の合計が対象になります。残業の有無や残業時間数にかかわらず、毎月定額で支給するものは実際の残業時間が免税範囲に入ったとしても課税対象になります。労働基準法規定を超える残業は違法であり、その残業代については免税規定も適用されないと考えられます。

まとめ

 当該残業代の免税規定は労働者の優遇措置と考えられます。日本にはない制度で日本の労働者からしたら、うらやましい制度であると思われます。一方、見方によっては、台湾は一定の残業を奨励しているようにも見えます。個人的にはこの制度を廃止することで税収を増やすことができるのではないかと思いますが、そのような法改正は多くの労働者から反発を受けるので、当該制度は継続されるものと思われます。

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