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第95回 貸倒損失の損金算入について


ニュース その他分野 作成日:2016年7月20日_記事番号:T00065352

KPMG 分かる台湾会計

第95回 貸倒損失の損金算入について

 前回のコラムで、営利事業所得税(法人税)の計算方法を説明いたしました。その中の、課税所得の計算過程における財務と会計の一時的な差異の例として、税務上の証憑がそろわない貸倒損失を挙げました。今回はその貸倒損失の税務上の損金算入要件について説明いたします。

1.税務上の貸倒損失が認められる3つのケース

 営利事業者の債権が回収不能になった場合、税務上も貸倒損失を計上することができます。税務上の貸倒損失の計上に関して、3つの場合が規定されています。

①債権者の法的整理などにより債権が切り捨てられる場合

②債権者の倒産・逃亡により債権が回収できない場合

③2年を超えて債権が回収できない場合

 以下、それぞれの場合の要件について説明します。

2.債権者の法的整理などにより債権が切り捨てられる場合

 債務者の法的整理などによって債権が切り捨てられ、債権の全部または一部が回収できない場合、下記の証憑をそろえて認定を受ける必要があります。

1)和解の場合、裁判所による和解調書または裁定書。裁判外のものについては和解調書

2)破産宣告または法による更生の場合、裁判所の裁定書

3)裁判所の強制執行による場合、債務者の財産で債務の完済に十分でないことを証する裁判所が発行した証憑

4)債務者が外国の法令により清算を行った場合、外国法令規定により清算完了を証明する関連書類および中華民国の在外大使館・領事館、商務代表または外国貿易機構の認証または証明

3.債務者の倒産・逃亡により債権が回収できない場合

 債務者の倒産・逃亡により債権の一部または全部を回収できない場合、郵便局の配達不能を示す内容証明郵便を取得し、下記の規定により処理します。

1)債権者が営利事業者である場合、内容証明郵便上に当該営利事業者の倒産前または住所移転前の確実な営業所在地が明記されていなければならない

2)債務者が海外に居住している場合、債務者所在地の主務機関が発行した債務者の倒産、逃亡前に登記した営業所在地を記載する証明書類を取得し、中華民国の在外公館、商務代表または輸出主務機関の証明を受ける

3)債務者が中国大陸に居住している場合、債務者所在地の主務機関が発行した債務者の倒産、逃亡前に登記した営業所在地を記載した証明書類を取得し、行政院大陸委員会の委託を受けた台湾地区および大陸地区人民の往来関連事務を処理する機関または団体の証明を受ける

4)債務者所在地の主務機関が発行した債務者が倒産、逃亡前に登記した営業所在地を記載した証明書類に関連機関から事実である認証を受けた場合、内容証明郵便が配達不能となった年度を貸倒損失の計上年度とする

4.2年を超えて債権が回収できない場合

 2年を超えて債権が回収できない場合、下記の規定に従い取り扱います。

1)債権者が2年超にわたって催促してもなお回収できない場合、郵便局による配達済の内容証明、または裁判所に訴追した回収催促証明のいずれかを取得し、内容証明郵便または回収催促証明の送達年度を貸倒損失の計上年度とする

2)債権が2年を超え、債権者が郵便局から「受取拒否」による送達不能の内容証明郵便を取得し、債権にかかる証明書類が事実であると認定された場合、内容証明郵便の不達年度を貸倒損失の計上年度とする

3)債務者が海外または中国大陸に居住している場合、債権者は回収催促により内容証明の送達証明書類またはその他証明書類を取得した後、債務者の確実な営業住所を証明できる関連書類を提示する必要がある

5.税務上の貸倒引当金

 貸倒損失に至らずとも回収懸念の債権に対しては会計上貸倒引当金を計上します。税務上の貸倒引当金の計上限度額は、受取手形および売掛金の1%とされています。ただし、貸倒の比率が高い事業者には、過去3事業年度の実際貸倒発生額の平均比率に基づき計上することも認められています。

まとめ

 債権の回収不能はないに越したことはありません。ただし、発生してしまった場合には、その損失が税務上認められるように、しっかりと必要な証憑を揃えていただければと思います。

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