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記事番号:T00065758
2016年8月10日16:00

 特許法は、発明者がその発明を公開することと引き換えに相当年数の独占権を得るためのものといっても過言ではありません。薬品の特許については、薬品は市場に出るまでにとても長い年月をかけて試験を行い、審査を受けなければならないため、特許法は特許権者を守るため、特許権の存続期間を延長できる制度を設けています。

 過去の特許法の規定では、許可証を取得しなければならない医薬品については、医薬品の特許公告(特許発効)後2年以上を経た後に許可証が取得された場合、存続期間の延長を申請できるとされていました。

バイアグラの特許

 第I83372号発明特許「男性の勃起不能または女性の性欲官能不良の治療と予防を行う薬学組成物」は、1994年5月14日に特許申請、96年12月11日に特許公告がされた特許で、その存続期間は14年5月13日まででした。同特許の特許権者が、同特許薬品に関する許可証を取得したのは、特許公告日の2年50日後であると主張したため、知的財産局は審査の結果、同特許の存続期間延長に同意し、存続期間は16年7月2日に変更されました。この特許こそ「バイアグラ」に関する特許です。

 同特許の特許権者は、13~14年に台湾の医薬品メーカー数社が同特許を侵害していることを理由に訴訟を提起しました。原告はまた、医薬品メーカーらは薬物の許可証を申請する際、生産する薬品が特許存続期間が切れた「後発医薬品(ジェネリック医薬品)」であるとしていることからも、これら医薬品メーカーが生産した薬品が同特許を侵害していると主張しました。

延長期間の判断基準

 裁判所の審理の結果、被告らの生産している薬品は全て同特許の範囲内のものでしたが、1社の外資系企業を除いた全ての被告が「原告の特許存続期間延長は無効」と主張し、裁判所も以下のようにその主張を支持しました。

1.特許存続期間の延長には知的財産局の許可が必要であり、それが合法かどうかは、行政裁判所により判断されるが、特許侵害訴訟においては、知的財産裁判所もまた、自らそれを判断する権限を有する

2.同存続期間の延長については、「国内における登記審査申請期間」を根拠とし、その審査申請案の提出日から、新薬許可証の発行に至るまでの日数を基準として計算すべきである。被告人は、特許権者による書類の補正期間は審査期間に計上すべきでないと主張したが、申請書類の欠如は特許権者の故意によるものではないため、その主張は理由にならず、従って同期間も審査期間に含まれる

3.「外国における臨床試験期間」は、外国政府の発行する書類に記載されている開始日と終了日を基準として判断すべきで、その準備期間、および完成後のレポート作成期間は含まれない。従って「臨床試験計画日」を開始日とすることはできない

4.当時の審査基準では、外国における臨床試験が米国で行われた場合、終了日は新薬許可証の申請日とすると規定していたが、この規定はあくまでも米国における臨床試験の場合であり、本件のように豪州で行われたものには適用されない

5.本件薬品の豪州での臨床試験期間は、96年1月9日から11月15日であり、特許公告のなされる以前のことであることから、同期間を特許存続期間の延長できる期間に計上すべきではない

6.「国内における臨床試験期間」もまた、政府の発行する書類に記載されている開始日と終了日を基準として判断すべきで、その準備期間、および完成後のレポート作成期間は含まれない

7.本案の国内における臨床試験期間から、外国における薬物審査機関との重複期間を控除すると528日となり、2年に満たない。よって、本件特許の特許存続期間の延長は無効であり、特許期間は14年5月3日までとなる

 結果として、同特許は既に期間満了を理由として消滅していることから、特許権者は、裁判所に対して、被告が関連医薬品を製造することの差し止めを求めることはできないと判断されたわけです。また、損害賠償についても、他の理由から請求は退けられました。

厳格に審理

 この案件から、裁判所は特許存続期間の延期に対する審理を相当厳格に行っていたことが分かります。現行法では「2年」という時間的制限規定は削除され、代わりに「許可証を取得していたために発明の実施ができなかった期間」という概念が充てられていますが、将来また同様の案件が発生した際には、裁判所はやはり同様に厳格な態度でそれを審理することは間違いありません。なぜならば、そもそも特許権とは「自由経済理論」に違反する制度なのですから、その期間の延長となれば当然厳格な審理が求められてしかるべきです。

 また、知的財産裁判所は前述の判決の中で、知的財産局が自ら定めた審査基準に反し、特許存続期間の延期を認めたことを厳しく非難しました。本件のように、公共の利益に関する案件については、行政機関を説得できればいいというものではなく、法の精神にのっとった処理をしなければ駄目だということです。

徐宏昇弁護士

徐宏昇弁護士

徐宏昇弁護士事務所

1991年に徐宏昇法律事務所を設立。全友電脳や台湾IBMでの業務を歴任。10年に鴻海精密工業との特許権侵害訴訟、12年に米ダウ・ケミカルとの営業秘密に関わる刑事訴訟で勝訴判決を獲得するなど、知的財産分野のエキスパート。専門は国際商務法律、知的財産権出願、特許侵害訴訟、模倣品取り締まり。著書に特許法案例集の『進歩の発明v.進歩の判決』。EMAIL:hiteklaw@hiteklaw.tw
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