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記事番号:T00066840
2016年10月12日15:56

 2007年7月、台中にある聯牧企業公司は同業者の曹氏より、ステンレス彎曲管溶接設備を購入したい中国の顧客がいるので、見積もりと資料を提供してほしいという旨の申し出を受けたため、同溶接設備の組み合わせ図5組と、見積もりを提供しました。しかしその1カ月後、曹氏より、中国の顧客は価格の安い他の業者の設備を購入したとの連絡を受けました。

 09年、聯牧公司は知り合いの工場業者である劉豊舟氏から、▽中国江蘇省にある華陽金属管件公司が他社から購入した5組のステンレス彎曲管溶接設備に多くの不具合が発生しており、操業が滞っている▽聯牧公司の責任者に現地に出向いてもらい、問題の解決に協力してほしい──という旨の連絡を受けたため、実際に責任者が現場に向かいました。責任者は現場で、華陽公司の購入した設備は、聯牧公司の製品とほぼ同様のものであることを発見しました。話を聞いた結果、▽曹氏は聯牧公司の提供した設計図を07年に台中にある聯懐企業公司に提供し、製品を作らせた▽5組の設計図をコピーした上で契約書に添付、華陽公司と契約を締結した──ということが分かりました。華陽公司は契約書の正本、添付ともに中国の対台湾窓口機関、海峡両岸関係協会(海協会)で公証を受けました。

異なる設計図なら複製でない?

 聯牧公司は検察に対して告訴を行いました。検察は聯懐公司の搜索を行った後、公訴を提起しましたが、台中地方裁判所は11年に被告人無罪の判決を下しました。12年、控訴審である知的財産裁判所も控訴を棄却しました。13年、聯牧公司は台中地方裁判所に対し民事訴訟を提起、聯懐公司に対し損害賠償250万台湾元を請求しました。

 13年9月、台中地方裁判所は、聯牧公司の請求を棄却、控訴審である知的財産裁判所も、14年11月に以下のような判断から、その訴えを退けました。

1.聯牧公司が曹氏に5組の設計図を提供した。同設計図には創作性が認められるため、著作権法の保護を受ける

2.しかし、最高裁判所は「設計図に基づいた施行を行い、著作に表示されている寸法、規格または機械構造図に基づいて、著作の概念を立体物にし、またその外観が工程図と同じである場合は、単なる著作内容の再現であり、複製行為としての性質を持つ行為である。それに対して、外観が工程図と異なる場合は、実施行為であるため、著作権法の規範する範囲のものではない」との判断を下している

3.被告の提出した華陽公司の溶接設備設計図からは、同溶接設備と聯牧公司の設計図とが異なるものであることが認められるため、聯懐公司の設計図は聯牧公司の設計図を複製したものではない。また、華陽公司の溶接設備もまた、聯牧公司の設計図を複製したものではない

4.聯牧公司の提出した契約書に記載されている設備の型番と、契約書に添付されている設計図の記載は異なり、そこには、内彎外彎両用機は含まれていない。同契約書はホチキスで綴じられており、ホチキスの痕跡から綴じ直しが行われたことが明らかであることから、同添付設計図は、契約当初のものとは異なるものであることが認められる。

公証で真正と推定

 その後、聯牧公司は本案を上告、16年7月21日、最高裁判所は以下のような理由により、原判決を破棄する判断を下したため、本案は現在、知的財産裁判所で再審理中です。

 「台湾地区與大陸地区人民関係条例(台湾地区と大陸地区人民関係条例)」第7条の規定によると、中国で作成された文書は、行政院の設置もしくは指定する機構、または委託する民間団体により験証(公証)が行われた場合、同文書は真正であると推定される。台湾の対中窓口機関、海峡交流基金会(海基会)の提出した証明書によると、中国江蘇省鎮江市中級人民裁判所において12年5月31日に華陽公司副総経理である巫達生氏に対して行われた調査記録には、係争契約書の添付書類は聯牧公司の提供した設計図であること、聯懐公司が製作し、華陽公司に対して引き渡された設備は、同設計図によるものであることなどが記載されている。すなわち、推定を覆すだけの証拠がない限り、同文書は真正と推定されるわけであるから、知的財産裁判所はそれと異なる認定をしたことには明らかな違法がある。

設計図のコピーにも著作権

 本案からは以下のような点を読み取ることができます。

1.機械設計図の著作権の侵害には、設計図そのもののコピーだけでなく、設計図を基に製造された機器も含まれる可能性がある

2.他者の設計図を無断でコピーしたり、製造に用いることも、著作権の侵害となる

3.中国に関する案件に関しては、裁判所は現場検証を行うことも、場合によっては証拠を直に観察することもできない。しかし、法には、中国大陸の文書は関連機関の験証を受けることでその真正が推定されるとの規定が設けられていることから、悪意のある当事者による「不当な工作」が行われ、訴訟の妨げとなる可能性がある。

徐宏昇弁護士

徐宏昇弁護士

徐宏昇弁護士事務所

1991年に徐宏昇法律事務所を設立。全友電脳や台湾IBMでの業務を歴任。10年に鴻海精密工業との特許権侵害訴訟、12年に米ダウ・ケミカルとの営業秘密に関わる刑事訴訟で勝訴判決を獲得するなど、知的財産分野のエキスパート。専門は国際商務法律、知的財産権出願、特許侵害訴訟、模倣品取り締まり。著書に特許法案例集の『進歩の発明v.進歩の判決』。EMAIL:hiteklaw@hiteklaw.tw
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