第214回 他人の商標誤用の代価


ニュース 法律 2016年12月14日

産業時事の法律講座

第214回 他人の商標誤用の代価

記事番号:T00067999

 老舗百貨店、遠東百貨(ファーイースタン・デパートメント・ストアズ)傘下で、多くの利用者で賑わう量販店、愛買(aマート)は、2010年12月のクリスマス・正月セールの際、UNICORNブランドの商品とPOLO PARTYブランドのタートルネックシャツを同じカウンターに配置し、カウンターには商標UNICORNのみを表示していました。また、同社は10年12月16、23日の会員カード保有者向け販促メールにおいても、POLO PARTYブランドの商品がUNICORNブランドであるかのような表示を行っていました。

 しかし、このUNICORNという商標は、台湾では大崴が男女服飾への使用に指定して登録している商標だったため、大崴は▽遠東百貨が前記のPOLO PARTYのタートルネックシャツを販売するに当たって、UNICORNのブランド名を利用したことは同社の商標権を侵害している▽消費者にPOLO PARTYのタートルネックシャツがUNICORNブランドであると誤認させたことは不正競争に当たる▽販促メールの中でUNICORNの図案を使用したことは著作権侵害(他者の著作を無断で転送した)に当たる──として、遠東およびその責任者に対して、連帯で賠償100万台湾元を請求しました。

侵害には意図が必要

 原告のこのような主張に対して、知的財産裁判所は13年6月、以下のような理由から、原告の要求を退ける判決を下しました。▽商標を商品上に表示したというだけでは、商標法における「商標の使用」に該当するとは限らず、形式上「消費者がそこから商品または役務の出処を区別でき」てはじめて「商標の使用」を構成する▽他者の商標権の侵害には「商標権者の商誉(のれん)を利用する意図」がなければならない▽遠東百貨は「誤植」しただけで、係争著作および商標を侵害する意図はなかった。従って遠東百貨の行為は侵害を構成するものではない──。

誤用は商標権の侵害?

 原告の控訴を受けた知的財産裁判所第二審は、15年1月に以下のような理由から、被告に10万元の賠償金の支払いを命じる逆転判決を下し、その他の請求については棄却しました。

1.遠東百貨は売り場においてPOLO PARTYのタートルネックシャツに対してUNICORNブランドである旨の表示を行っていたが、商品の展示方法および商品に付けられたタグなどから、消費者はそれらの商品を区別することが十分に可能であった。従って、原告が提出した資料からは、遠東百貨の行為が取り引きに影響する、または相互の事業間の自由競争を阻害する、あるいは同行為により交易相手(消費者)が行為者(遠東百貨)に対して有利な選択を行うとは判断できない

2.愛買の販促メールにおいて、POLO PARTYのタートルネックシャツの写真をUNICORNブランドの下に配置したことについては過失が認められる。それにより消費者にPOLO PARTYのタートルネックシャツがUNICORNブランドのものであるとの誤認を与えた。従って「遠東百貨の行為が商標の『合理使用』」である」とは認められない

3.しかし、▽遠東百貨のセール期間が極めて短かった▽POLO PARTYのタートルネックシャツの売り上げがわずか26万1,495元だった▽誤用された商標が実際の商品に対して使用されたものではない──などを総合的に審酌すれば、損害賠償額は10万元が妥当である

4.遠東百貨は販促メールを製作するに当たり、主観的には同商標図案を商標として使用しており、美術著作として利用していると認めることはできない。よって、遠東百貨に著作権侵害の故意または過失があったと認めることはできない

 原告は二審のこの判決を不服として最高裁判所に上告しましたが、今年11月に請求を退ける判決が下されたため、全案が確定しました。

販売目的が構成要件に

 本案件は10年に発生したものですが、当時の商標法61条に規定されていた商標の侵害形態には、商標権者の同意を得ずに「同一の商品または役務に対して登録商標と相同する商標を使用する」ことで侵害を構成するとの規定がありました。同条文は11年6月に改正され、現在の70条「商標権者の同意を得ずに、販売を目的として…『同一の商品または役務に対して登録商標と相同する商標を使用する』ことで商標権の侵害となる」とする規定となりました。

 理論上、裁判所が旧法規定を適用する際には、遠東百貨が行った商標の「誤植」はその性質上「他者の登録商標の使用」に当たるのかを検討する必要があるでしょう。しかし、裁判所は法律を機械的に解釈して遠東百貨が「過失により他者の商標権を侵害した」との結論に至り、このような解釈方法が最高裁判所の支持を得ました。

 しかし、11年の法改正により、同じような状況が過失による商標権の侵害を構成すると判断されることはなくなったようです。

徐宏昇弁護士

徐宏昇弁護士

徐宏昇弁護士事務所

1991年に徐宏昇法律事務所を設立。全友電脳や台湾IBMでの業務を歴任。10年に鴻海精密工業との特許権侵害訴訟、12年に米ダウ・ケミカルとの営業秘密に関わる刑事訴訟で勝訴判決を獲得するなど、知的財産分野のエキスパート。専門は国際商務法律、知的財産権出願、特許侵害訴訟、模倣品取り締まり。著書に特許法案例集の『進歩の発明v.進歩の判決』。EMAIL:hiteklaw@hiteklaw.tw

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