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第216回 不当党資産処理による中央投資公司の「没収」後


ニュース 法律 作成日:2017年1月11日_記事番号:T00068449

産業時事の法律講座

第216回 不当党資産処理による中央投資公司の「没収」後

 2016年11月25日、行政院不当党産処理委員会(党産会)は、国民党に対して、30日以内に、所有する中央投資公司(中投)、欣裕台公司の全株式を中華民国に対して譲渡することを命じる処分書を発行しました。

 国民党はこれを不服として、台北高等行政法院に対して処分の取り消しと、「執行停止」を求める行政訴訟を提起しました。

中投と欣裕台は不当党資産

 台北高等行政法院は16年12月16日に「国への譲渡」に関しては執行の暫定停止を認めましたが、両社が「不当な政党財産である」との処分については執行の停止を認めませんでした。

 党産会の処分書の記載は以下のようなものでした。

 中投は71年の設立時、およびその後の増資についても、経費は全て政府より捻出された。それにも関わらず、株式については、「特定個人」名義のものとなっており、「特定個人」が死亡した場合、国民党が文書による証明を行わない限り、それらの株式を他者名義に登録することはできないことになっていた。

 欣裕台は中投から分割された企業である。両社共に国民党所有の「不当政党財産」、つまり「特定の政党が政党の本質に違反、または民主的法治原則に反する方式により、自ら取得した、またはその付随組織に取得させた財産」である。

譲渡は暫定停止

 一方、台北高等行政法院の決定書の記載によると、党産会が両社を「没収」した後、もし同処分を即時執行した場合、たとえ行政訴訟の結果が「原処分の取り消し」であったとしても、既に変更されてしまっている所有権と経営権の原状回復は難しく、また、重大な資源の浪費となることを理由に、株式の譲渡については暫定停止処分としました。

 また決定書では、両社は原処分において不当政党財産と認定されていることから、すでに株式の「処分禁止」という効力が発生しており、将来の執行に対する保障となっているので、もし株式の処分を禁止しなければ、国民党は財産の処分を行ってしまい「不当政党財産条例の立法目的を達成することができなくなる」との理由から、裁判所は国民党の「処分禁止の取消」の要求を退けました。

 党産会は、台北高等行政法院の決定を受けてほっとしていることでしょう。なぜならば、株式が国のものとなった場合、政府から役員や経営陣を派遣しなければならなくなるという、もっと大きな問題が発生してしまうからです。

 各種の研究報告結果によれば、中投は実質資本額110億台湾元、欣裕台は2億元程度の企業ですが、直接または間接的に支配している企業は、膨大な数に上り、その業種も多岐にわたっており、多くの利益関係が発生しています。

 そのため、もし両社が国のものとなった場合、それら関連企業の経営陣も一新されることとなり、結果、それらの事業を全て「処理」するためには、より多くの人手と、費用、時間が必要となってしまうのです。

 台北高等行政法院の行った決定によれば、経営陣を一新するという処理方法のほか、公開入札という処理方法も存在します。

 両社(および将来不当政党財産と認定されるであろう企業について)は、かなりの利益を生むことが予想される投資企業であるため、興味を示す企業は少なくありません。しかし、公開入札の結果、経営陣はやはり一新されるでしょう。

解散の可能性も

 さらに、不当政党財産処理条例の目的は、「政党が政党の本質に違反、または民主的法治原則に反する方式」により、取得した財産の解消であるため、もし両社の投資対象が市場の独占や、特権などを利用した不当な経営を行っている場合、政府としてはそれらの企業を「そのまま」手放すことはできず、経営方式を変更させた上で手放すか、または企業を解散させるなどの方法を取らなければなりません。

 以上のような「没収」後のプロセスは、両社が直接的または間接的に投資、掌握している企業、およびそれらの企業と業務上の往来のある企業全てに影響する可能性があります。

 今回の党産会の「アクション」は全面勝利と言ってよいでしょう。今後もその他の党営事業に対する処理は続いていくと思います。一方で、国民党にとっては、直接的または間接的に投資を行っている事業を処理する最後のチャンスでしょう。

 皆さんの企業も、取引のある企業が「不当政党財産」の企業であるかどうかを確認した上で、もしそうであった場合は、早めの処置を取られることをおすすめします。

徐宏昇弁護士

徐宏昇弁護士

徐宏昇弁護士事務所

1991年に徐宏昇法律事務所を設立。全友電脳や台湾IBMでの業務を歴任。10年に鴻海精密工業との特許権侵害訴訟、12年に米ダウ・ケミカルとの営業秘密に関わる刑事訴訟で勝訴判決を獲得するなど、知的財産分野のエキスパート。専門は国際商務法律、知的財産権出願、特許侵害訴訟、模倣品取り締まり。著書に特許法案例集の『進歩の発明v.進歩の判決』。EMAIL:hiteklaw@hiteklaw.tw

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