ニュース 法律 作成日:2017年3月22日_記事番号:T00069624
産業時事の法律講座李珍妮女史は、2004年に宣明智氏と呉春台氏という富豪と交際し、05年7月10日に女児を出産し、宣氏が認知しました。12年にメディアが、宣氏が以前、李女史と浮気をし、女児をもうけていたと報道。その後、宣氏は呉氏から、女児は宣氏の子ではないと告げられ、13年、台北地方裁判所に対して「認知取り消し」の訴えを提起し、勝訴しました。
14年、李女史は裁判所に対して「親子関係存在確認」の訴えを提起し、呉氏が女児の父親であると主張し、▽呉氏は毎月15万台湾元の養育費を支払うこと▽呉氏は09年6月~14年2月までの間、李女史が「立て替えた」養育費775万元を賠償すること──などを求めました。台北地方裁判所は14年4月の判決で、呉氏と女児の親子関係の存在、および毎月4万5,000元の養育費の支払いは認めましたが、立て替えていたとされる養育費に関する主張は退けたため、双方が控訴しました。
台湾高等裁判所は15年7月の判決で、呉氏と女児の親子関係が存在することを確認したほか、呉氏に対して、毎月4万5,000元の養育費の支払い、および256万5,000元の「立て替えられていた」養育費の支払いを命じました。呉氏は最高裁判所に対して上告しましたが、最高裁判所は17年3月9日、呉氏の訴えを退けました。
DNA鑑定を拒否
本件において、裁判所は呉氏に対しDNA鑑定を求めましたが、呉氏は再三にわたって裁判所の命令を拒否しました。それでも台湾高等裁判所は2人の親子関係が存在することを確認しました。判決は以下のようなものです。
1.李女史は15年7月10日に女児を出産した。呉氏は、▽李女史が14年12月13日に行った検診の記録に「妊娠5週5日目、誤差2週間」との記載があり、これより逆算される受胎日の最大範囲は04年10月20日~11月23日である▽2人が初めて性的関係を持ったのは04年11月27日である──などを理由に、当該女児は、自分の子ではあり得ないと主張した
2.しかし▽呉氏は裁判所において、2人が初めて性的関係を持ったのが04年11月27日であるかどうかは覚えていないと発言している▽李女史が、04年11月7日に2人でロシアバレエ団のバレエ鑑賞に行った際の写真を提示した──ことなどから、2人が04年11月27日前後に数度にわたって性的関係を持っていた可能性がある
3.また、呉氏は▽05年4月に李女史とともに米国に向かい、出産準備をした▽2人が09年に別れる前まで、毎月生活費を渡していた▽女児の誕生パーティーに何度も参加していた▽2年間、毎週土曜日に李女史宅を訪れ、女児と面会していた▽李女史および女児を連れて遊びに行ったことが何度もあった──。呉氏の経歴からして、呉氏が一定程度の判断力を有していることは明らかで、「相当程度の事実と証拠により、李女史の出産した女児が自らの子供だと判断していたのでなければ」このようなことをするはずがない
4.さらに、呉氏と李女史の出産した女児の血液型が共にA型であることから、遺伝法則上も女児が呉氏の子である可能性がある
5.以上のような事実と証拠から、「李女史が出産した女児と呉氏の間には血縁関係が存在する合理的な想像ができる
6.呉氏は台北地方裁判所および高等裁判所において、裁判所から血液型およびDNA鑑定を求められても無視してきた。このような行為は、「正当な理由なく検査を拒否する」ことに該当する。家事事件法第10条第1項の規定によると、「当事者の一方が血縁鑑定の申請をした場合、その主張する事実について、既に相当程度の立証がなされており、また裁判所が同申請を正当なものと認め、血液鑑定を命じた場合において、他方の当事者に挙証責任がなくても、協力する義務がある。もし正当な理由なく拒否したときには、裁判所は弁論の全てまたは一部、ならびにその他の関連事実および証拠を斟酌(しんしゃく)した上で、他方の当事者に不利な判断を下すことができる」
7.呉氏の受胎期間に関する主張には根拠があるが、受胎期間には誤差が生じることもあり、女児が呉氏の子である可能性を排除するには至らない
8.以上を総合すれば、李女史の出産した女児は、呉氏の子であると判断することができる
9.さらに、呉氏の09年以前の行為は、法律上の「養育」行為に該当するため、民法第1065条の規定により、呉氏は女児を「認知」していたこととなり、女児は呉氏の非嫡出子であったことになる。
養育行為で認知扱い
本件では男性側がDNA検査を拒否し続けたにも関わらず、裁判所が男性を父親と判断し、最高裁判所もこのような判断を合法としたため、今後の親子関係に関する訴訟における「法則」となることでしょう。また、「非嫡出子の面倒を見ることが法律上の『養育』と見なされ、『認知』の効果を持つ」という裁判所の見解も、参考に値するものでしょう。
徐宏昇弁護士
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