ワイズコンサルティング・グループ

HOME サービス紹介 コラム 会社概要 採用情報 お問い合わせ

コンサルティング リサーチ セミナー 在台日本人にPR 経済ニュース 労務顧問会員

第220回 第三者取消訴訟


ニュース 法律 作成日:2017年4月12日_記事番号:T00069968

産業時事の法律講座

第220回 第三者取消訴訟

 法律上利害関係を持つ第三者が、自らの責に帰さない事由により、訴訟に参加できなかったため、判決結果に影響を与える攻撃または防御方法を提出できなかった場合、同第三者は、双方の当事者を共同被告として、確定した終局判決に対して「取り消し訴訟」を提起し、自らに不利な部分についての判決の取り消しを求めることができます。このような訴訟は「第三者取り消し訴訟」といい、第三者は取り消しを求める判決が確定してから30日以内に同訴訟を提起しなければなりません。もし取り消しを求めるべき理由を後から知った場合は、それを知った日から起算されます。

 特許権者である詹弘儀氏の台湾発明特許第284025号「立体集熱装置を備えた容器」は、金属突起である集熱装置を鍋底の下部に放射状に配置したフライパンです。同装置は「容器内の被加熱物質が迅速に熱を受け」、燃料の節約につながるというもので、特許内容としては、同金属突起の配列方式に関する特許です。

 御鼎節能科技は2011年8月、特許権者より「専用実施権」のライセンスを受け、12年4~5月に柳金鳳氏との共同提携により同特許を利用したフライパンを製作しました。しかし双方はその理念の違いから、8月に提携関係を解消しました。

中国に相似の特許

 12年11月、御鼎節能は柳氏が居楽節能科技の名義で、低炭素調理器具「鍋達人」シリーズを販売していることを発見しました。そこで御鼎節能は、居楽節能のフライパンを入手し、「鍋達人」が同特許を侵害していることを確認した後、13年初めに知的財産裁判所に対して訴訟を提起し、御鼎節能による同フライパンの製造・販売の禁止、回収・破棄、並びに200万台湾元の損害賠償を求めました。

 御鼎節能は13年3月、経済部智慧財産局(知的財産局)において自らを同特許の「専用実施権者」として登録しました。居楽節能は同年10月に解散しました。

 14年1月、知的財産裁判所は判決により以下のような認定を行いました。

1.詹氏による特許の設計は、1999年に既に中国実用新案特許2342740で提案されており、同様にフライパンに長さの異なる凸状の集熱装置を設けている

2.中国特許は集熱装置において「二つの短い突起は二つの長い突起の間に配置されている」という係争特許の特徴をそのまま再現しているわけではないものの、同業者が「その数量と長さを調整することで、係争特許を容易に完成させることができる」

3.被告製品における長短突起の配列方式は実質的に係争特許のそれと相似しているが、特許そのものに進歩性がないため侵害を構成しない

 原告は控訴しましたが、知的財産裁判所第二審は▽同中国特許は「規則的に並んだ長いフィンの間に中短のフィンが挟まれている」▽係争特許は突起の配列が異なるものの、「説明書にはその配列にどのような特殊な効果があるのかが記載されていない」──と判断し、原判決を維持しました。その後、御鼎節能が上告を行わなかったため、同判決は15年2月1日に確定しました。

期限後の提起

 御鼎節能は敗訴後、15年3月に弁護士を通じて詹氏に対して専用実施権契約の解除を申し入れました。詹氏は同年7月17日に利害関係者の身分により、知的財産裁判所に対して裁判記録の閲覧、複製を申請。裁判所は7月22日付でそれを認めました。

 係争特許については、それに先立つ15年3月16日、知的財産裁判局により、前記の理由により、特許の取り消しが査定されていました。詹氏は8月3日、裁判所において裁判記録の閲覧を行った後、8月12日に確定判決の取り消しを求めて第三者取り消し訴訟を提起しました。

 知的財産裁判所は16年5月の判決の中で、▽第三者取り消し訴訟の提起は、係争訴訟の存在、または係争訴訟の判決確定を知ったときから30日以内でなければならない▽詹氏は15年3月19日の段階で御鼎節能の弁護士からの連絡を受けたことで「係争訴訟の存在を知り、また同訴訟の判決が確定した」ことを知ったにもかかわらず、同年8月になってはじめて訴訟を提起した▽そのため、同訴訟は法定の期限を越えて提起されたものである──との認定を行いました。

 詹氏は上告しましたが、最高裁判所は17年2月15日、判決により訴えを退けました。判決では、御鼎節能の弁護士通知を取り上げ、「御鼎節能は係争判決が確定したこと、および係争特許が取り消されるべき原因を明確に伝えており、抗告人はその段階で第三者取り消し訴訟を提起すべき理由を知ったこととなる」と判断しました。

 注意すべきは、前述の知的財産裁判所と最高裁判所の判決は、どちらも詹氏がどのように「判決結果に影響を与える攻撃または防御方法」を提出し、係争特許が進歩性を持つことについての証明を行うことができたのか、ということについての説明を行っていない点です。これについては、詹氏が知的財産裁判局の特許取り消し処分について別途提起した行政訴訟が最終的に16年5月12日に最高行政裁判所に退けられており、敗訴が確定した際の判決理由から見る限り、特許権者においても「判決結果に影響を与える」証拠を提出、または主張を行うことはできなかったことが分かります。

徐宏昇弁護士

徐宏昇弁護士

徐宏昇弁護士事務所

1991年に徐宏昇法律事務所を設立。全友電脳や台湾IBMでの業務を歴任。10年に鴻海精密工業との特許権侵害訴訟、12年に米ダウ・ケミカルとの営業秘密に関わる刑事訴訟で勝訴判決を獲得するなど、知的財産分野のエキスパート。専門は国際商務法律、知的財産権出願、特許侵害訴訟、模倣品取り締まり。著書に特許法案例集の『進歩の発明v.進歩の判決』。EMAIL:hiteklaw@hiteklaw.tw

産業時事の法律講座