第211回 偽証の教唆


ニュース 法律 2016年10月26日

産業時事の法律講座

第211回 偽証の教唆

記事番号:T00067082

 高国慶氏は、台湾ヤフー!に対して「高国慶医師(微創脊髄能量医学)詠賛聯合診所人工関節幹細胞治療法」というブログの開設を申請し、同ブログにおいて「心臓(血管検査)」という文章を公開しました。しかし、同文章は李相台氏のサイト「李相台診療所Dr.Lee's Clinic」に記載されていたいくつかの文章を編集したもので、李氏の文章に使われている写真も複製利用していました。李氏はこの事実を発見後、告訴を行いました。

 高氏は李氏の告訴内容を否定こそしなかったものの、「コンピューターは使えない」「ブログは多くのボランティアが手伝って作ってくれたものだ」と抗弁をしました。同ブログには20数項目のカテゴリーが設けられていましたが、そのうちの一つが医学であり、その中には「ボランティアによってまとめられた」8,000を超える文章が収められていました。李氏の告訴を受けた高氏はその「誤記」に気づき、李氏との和解を試みましたが、李氏は和解を受け入れませんでした。知的財産裁判所は、高氏のいうところの「ボランティア」である鍾文彬氏を尋問しましたが、その証言は採択されず、結果、高氏が他者の著作物を無断で「複製」「公開転送」したと判断、高氏は、懲役7月が確定しました。

実刑判決が確定

 鍾氏は▽同文章は高氏より提供されたものを自ら入力しアップロードした▽高氏は文章の内容を知らない──、などと証言しましたが、李氏は高氏が鍾氏に偽証を教唆したものと考え、検察に対して告発を行いました。検察は2人を偽証と偽証教唆の罪で起訴、新北地方裁判所は2015年6月に、鍾氏については偽証罪として懲役3月の有罪判決を、高氏については偽証教唆罪として懲役4月の有罪判決を下しました。また、両判決ともに罰金刑への変換はできないものとしました。両者は共に控訴しましたが、鍾氏は死亡、高氏については、台湾高等裁判所が15年12月に控訴を退ける判断を下し、最高裁判所もまた今年10月5日に上告を退ける判断を下したため、全案が確定しました。

代理入力できたか

 台湾高等裁判所は、高氏の偽証教唆を判断したことについて、判決の中で以下のような理由を述べています。

1.鍾氏は09年から12年の間、一度も高氏の診療所で診療を受けたことはないことから、09年4月に診療を受けた後に、ボランティアとなり、高氏に代わってブログの文章を入力したとは考えにくい

2.第一審裁判所は法廷において、本件文章を鍾氏に提供し実際に入力させたが、鍾氏は16分間で72文字(句点、読点などの符号を含まず)しか入力できなかった上、符号を選択することもできなかったため、鍾氏にはコンピューターを利用した文書処理能力はないと判断した

3.高氏のブログにおける文章のホームページには、李氏のサイトにおいて使用されていた「ソースコード」が含まれていたことから、同文章は李氏のサイトに記載されていた文章の文字と写真を、そのまま複製してきたものであることが証明できる

 また、犯罪の成立について、裁判所は判決において以下のような説明をしました。

1.訴訟上、被告人には黙秘権が認められ、被告人は自らの無罪を証明する必要はない。しかし、法律はあくまでも被告に消極的な不作為の権利があるとしているだけであり、もし被告が自らに有利な供述を得るために、他者が偽証することを積極的に教唆した場合、法律が被告に与えた保障の範囲を超えてしまうため、犯罪が成立する

2.被告人が自らの刑事案件について、虚偽の供述を行うことは犯罪とはならない。それは被告人が真実の供述を行うことに「期待可能性」がないことによるものであるが、もし被告人が他者を教唆し、虚偽の供述を行わせた場合、当該第三者は国家の捜査、審判権に関する法益を侵害している

3.偽証罪とは「証人が供述前または供述後に宣誓した案件と重要な関係にある事項について、虚偽の陳述を行った」という行為を処罰するものである。当事者がそれにより有利または不利な判決を受けるかどうかは、同犯罪の成立に影響を与えるものではない

4.いわゆる「案件と重要な関係にある事項」とは、同事項の有無が、捜査または裁判の結果に影響を与えるかどうかにより判断される。偽証の内容が司法機関によって採択されれば、裁判所が当事者に対して行う有罪か無罪かの判断に影響を与える。このような事項を「案件と重要な関係にある事項」というのであるから、裁判官を錯誤に陥らせるまたは判断ミスを発生させる可能性があれば、同犯罪は成立するのである。当事者がそれにより有利または不利な判決を受けるかどうかは、偽証罪の成立に影響を与えるものではない

徐宏昇弁護士

徐宏昇弁護士

徐宏昇弁護士事務所

1991年に徐宏昇法律事務所を設立。全友電脳や台湾IBMでの業務を歴任。10年に鴻海精密工業との特許権侵害訴訟、12年に米ダウ・ケミカルとの営業秘密に関わる刑事訴訟で勝訴判決を獲得するなど、知的財産分野のエキスパート。専門は国際商務法律、知的財産権出願、特許侵害訴訟、模倣品取り締まり。著書に特許法案例集の『進歩の発明v.進歩の判決』。EMAIL:hiteklaw@hiteklaw.tw

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