ニュース その他分野 作成日:2016年12月28日_記事番号:T00068241
月間5大ニュース1月の総統選挙で圧勝した民進党の蔡英文主席(60)が5月20日、中華民国第14代総統に就任した。台湾の政権交代は総統直接選挙導入以降3度目で、民進党は初めて多数与党に、蔡氏は台湾初の女性総統となった。
蔡総統は、多弁な人物ばかりだった従来の民選総統と比べると、あまり前面に立って話をしないため、コミュニケーション不足と受け取られて評価で損をしている面もある(中央社)
蔡総統は就任演説で台湾の若者の置かれた状況の改善に取り組む決意を強調。それに向けて経済構造の転換や、年金制度改革、教育制度改革、高齢化対策、司法改革、環境汚染対策、食品安全問題、貧富の差の是正など、さまざまな課題の解決を目指す姿勢を表明した。
対中関係では、1992年の中台会談の歴史的事実を認めつつ、過去20年余りの交流を基盤とした関係構築を中国側に呼び掛けたが、「一つの中国」の「1992年の共通認識(92共識)」を前提とする中国とは平行線をたどり続け、中台関係は冷え込んでいった。中国高官の訪台は台湾の政権交代を機にストップし、双方の窓口機関の接触も途絶えた。
中国は経済面で蔡政権に圧力をかける姿勢を鮮明にした。象徴的だったのが中国人ツアー客の削減で、今年訪台する中国人観光客は通年で約344万人と前年比17~18%の減少が予想されている。中国人客を中心にビジネスを展開していた観光バス業者やホテル業者は苦境に陥り、9月に約1万人が台北市内で史上初のデモを行った。このため政府は予算3億台湾元で台湾人による台湾観光振興プランを策定。11月には第一弾ツアーが行われた。
中国は9月下旬、国民党系首長の台湾8県市のみを観光や農産物調達で優遇する姿勢を打ち出し、これに基づいて11月下旬、農産物分野の中国政府・企業の代表団が8県市を訪問した。年末の12月には大手海鮮レストランチェーンの海覇王が「一つの中国」支持を表明する新聞広告を発表。台湾積体電路製造(TSMC)の張忠謀董事長と巨大機械工業(ジャイアントMFG)の劉金標董事長が、総統府資政(顧問職)への就任を辞退した。いずれも中国の圧力が背景と疑われている。米国のトランプ新政権が発足後も中国との対立姿勢を緩和しなければ、中国の蔡政権への態度はより厳しさを増すと予想される。
早くも正念場へ
蔡政権は就任当初こそ高い支持率を誇ったものの、11月下旬に蘋果日報が行った世論調査で「不満足」が58%、「満足」が34%と半年で大きく評価を落とした。週休2日制導入を目指す際に国定休日が一時復活した混乱をはじめ、経済、労働問題、中台関係でいずれも低い評価に甘んじている。司法改革、年金制度改革も依然道筋が見えておらず、李登輝元総統は11月下旬、「蔡総統には決断力が必要で、気を付けないと韓国の大統領になってしまう」と述べ、実績ほぼゼロのまま不祥事で退任を余儀なくされる朴槿恵(パク・クネ)大統領を例に挙げて奮起を促した。
台湾の直面する課題の多さから就任当初から「蜜月期なき総統」と呼ばれた蔡総統は、所期の改革を断行できるのか、来年早くも正念場を迎えそうだ。
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