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第7回 1人1枚を目指せ!icashカード


ニュース 金融 作成日:2017年2月24日_記事番号:T00069186

台湾産業ココがスゴイ

第7回 1人1枚を目指せ!icashカード

 春節(旧正月)明けのワイズニュースで「icashカード、台北MRTなどで利用可能に」(https://www.ys-consulting.com.tw/news/68878.html)とお伝えした通り、セブン-イレブンの電子マネーカード「icash2.0」が2月10日より、台北MRT(都市交通システム)でも使えるようになりました。しかも、悠遊カード(イージーカード)同様2割引きで乗車でき、バス乗り継ぎ運賃は8台湾元です。これにより、高雄MRT、台湾鉄路(台鉄)など主な公共交通機関をほぼカバーしました。

/date/2017/02/24/20icash_2.jpg14年発行のicash2.0記念カード(YSN)

 とはいえ、悠遊カードがあれば、必要性を感じません。icash2.0カード発行会社の愛金卡は、1日当たり延べ350万人の通勤客をターゲットに、発行枚数を30%増やしたいと意気込んでいますが、うまくいくのでしょうか。

乗車キャンペーンでメーンカード化

 クレジットカードより気軽に使える電子マネーカードは、▽お得な利用ポイントサービス▽利用できる店舗数▽入手のしやすさ──が選択の決め手。

 そこで、icash2.0カードは3月末まで、台北MRT・バスの乗車に利用すれば、オープンポイントが2倍貯まるキャンペーンを実施しています。乗車した同日に統一多拿滋(ミスタードーナツ)など指定の飲食店でicash2.0カードを利用すると、さらにオープンポイント500ポイントが付与されます。

 また3月14日までセブン-イレブン、ミスタードーナツ、ドラッグストアの康是美(コスメッド)などで指定商品の「買1送1」(1点購入で2点目無料)、「第2件5折」(2点目半額)、特別価格キャンペーンも実施中です。

 ただ、こうした統一企業(ユニ・プレジデント)グループなどの店舗でお得に使えるのは事実ですが、悠遊カードは特約店2万3,000店以上(16年9月現在)を抱える上、全家便利商店(台湾ファミリーマート)の「UUPON」ポイントがたまります。

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 筆者はファミマよりセブン贔屓(ひいき)なので、パスケースの悠遊カードをicash2.0カードと入れ替えましたが、メーンカードとサブカードの座が替わっただけでは、icash2.0カード発行枚数は増えません。そもそも、やっぱり悠遊カードがあれば十分と考える人の方が多いのではないでしょうか。

飽和市場でも成長の余地あり

 そこで、一体どのくらいの人が悠遊カードを持っているのか、金融監督管理委員会(金管会)の統計を調べてみました。すると、2016年末時点の電子マネーカード発行枚数(利用停止の申請があったカードは除く)8,058万1,284枚のうち悠遊カードは5,384万枚と、圧倒的首位。しかも、台湾人口2,352万人の2.3倍でした。

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 悠遊カードに大きく引き離され、2位のicashカードは1,524万枚と、1人1枚に届いていません。裏を返せば、欲しいと思わせることができれば、発行枚数30%増が可能といえそうです。

便利さより「カワイイ」を刺激

 皆さんはセブン-イレブンの店舗でレジに並びながら、icash2.0カードをもう1枚買おうかなと、思ったことはございませんか。

 前述の通り、利用できる店舗数では悠遊カードにかないませんが、気軽に購入できるのがicash2.0カードの強み。レジ前では必ず、豊富なデザインのicash2.0カードが目に入ります。

 同社サイトで、これまでに発売されたデザイン数を数えてみると、icashカードからicash2.0カードに切り替わった14年以降だけでも▽14年、17種▽15年、65種▽16年、117種▽17年、21種──に上ります。

 台北MRT・バスでの利用開始を発表した2月10日にも、icash2.0カードは新デザインカードを一挙10種も発表していました。▽台北MRT路線図と車両イラスト▽ポケットモンスターの「ピカチュウ」と「ヒトカゲ」▽リサ・ラーソン(スウェーデンの陶芸家)の「マイキー(猫)」「ハリエット(ハリネズミ)」▽ウサギのmachiko(まちこ)「バスバージョン」「鉄道バージョン」──で、それぞれ6,000~2万枚の数量限定、いずれも1枚100元です。

 公共交通機関の乗車や、少額支払いの買い物といった利便性だけを考えれば、悠遊カードでも、悠遊カード提携のクレジットカード(銀行18行が発行)でも、スマートフォンでも事足ります。

 ですが、消費者の「カワイイ」と思う心を刺激し、数量限定のハングリーマーケティング(品薄商法)で「今買わなければ」と焦らせ、手ごろな価格設定で2枚目を購入したり、友人や家族へのちょっとした贈り物やお土産にしやすい…。

 台北MRT・バス利用が可能になったことで、購入の心理的ハードルはぐっと下がりました。台湾人や居住者だけでなく、日本など海外からの旅行者も、悠遊カードよりicash2.0カードを選ぶことが増えそうですね。

ワイズメディア 青木樹理

台湾産業ココがスゴイ