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第109回 機能通貨


ニュース その他分野 作成日:2017年3月1日_記事番号:T00069214

KPMG 分かる台湾会計

第109回 機能通貨

 2016年度より適用された非公開会社向けの会計基準であるEAS(Enterprise Accounting Standard:企業会計準則)において、従来のROCGAAP(台湾基準)では明確な規定がなかった機能通貨という概念があります。今回は機能通貨の解説をします。

1.機能通貨とは

 日本の企業は日本円で記帳し、台湾の企業は台湾元で記帳するものだと考えるかもしれません。しかし、台湾の企業でも取引のほとんどが米ドルのケースもあります。そのようなケースにおいて、台湾元で記帳すると、為替差損益が多く発生し企業の損益が分かりづらくなる可能性があります。そこで、機能通貨という概念があります。機能通貨とは、企業が営業活動を行う主たる経済環境の通貨をいい、企業が主に支出し、創出する通貨と言うことができます。企業は機能通貨を決定し、機能通貨によって記帳をすることが求められます。

2.表示通貨とは

 例えば米ドルが機能通貨といっても、台湾で米ドルの財務諸表を作成しても利用者にとって不便なため、表示通貨という概念があります。機能通貨を用いて記帳して作成した数値を表示通貨に換算して財務諸表を作成します。この表示通貨が台湾であれば台湾元になり、台湾元の財務諸表が作成されます。この機能通貨から表示通貨の換算に際しては為替差損益は発生させません。

3.機能通貨の決定

 複数の通貨により取引を行っている企業にとって、どの通貨を機能通貨と決定するかは重要です。なぜなら、この機能通貨の決定により、財務諸表の数値が変わってくるためです。その決定は簡単にいうと、販売およびコストに重要な影響を及ぼす通貨を主とし、追加的に資金調達および利益留保に用いられる通貨を指標にして決定します。従って、台湾企業の機能通貨が必ずしも台湾元にはなるとは限らない点に注意が必要です。

4.金融管理委員会のQ&A

 取引のほとんどを米ドルで決済しているケースに関して、台湾の金融監督当局である金融監督管理委員会(金管会)がQ&Aで説明しています。Q&Aは、高度に国際化した企業活動においては複数の国家の影響を受けるため、販売およびコストに重要な影響を及ぼす通貨のみでは機能通貨の決定は困難であり、企業のおかれた経済環境、配当および税務申告が企業経営に与える影響を考慮する必要があるとしています。台湾当局としては、米ドルなど他の国の通貨を機能通貨とすることはかなり慎重な見解であり、追加的指標を考慮し、台湾元を機能通貨と決定するよう促していると見受けられます。

5.税務上の取り扱い

 機能通貨については会計上の判断と同じです。ただし、台湾元以外の通貨を機能通貨とした場合、その判断が正しいかどうか税務調査の対象となり、当該会計処理が否認される可能性もあります。

6.まとめ

 金管会のQ&A等や税務リスクを考慮し、決済通貨のほとんどが米ドルである台湾の大企業も機能通貨は台湾元としています。そのため、EAS導入後もほとんどの台湾企業は台湾元を機能通貨として決定すると考えられます。

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