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第111回 投資損失の税務認定


ニュース その他分野 作成日:2017年4月5日_記事番号:T00069833

KPMG 分かる台湾会計

第111回 投資損失の税務認定

 企業が他社へ投資をし、その投資先の経営状況の悪化により投資が回収できないケースがあると思います。今回は営利事業者の投資損失の税務認定について、事例を基に説明します。

1.投資損失認定の税務規定

 営利事業者が投資損失を損金計上するためには、被投資事業の減資による欠損補塡(ほてん)、合併、破産または清算の証明書類が必要です。海外における投資事業で、直接の投資先が持ち株会社など実質的な経営実態を有していない場合においては、持ち株会社の投資先の実質的に経営実態のある事業において欠損が生じたことを証明する書類を用意する必要があります。当該証明書類は、台湾の海外駐在代表機構の認証が必要です。

2.投資損失の否認事例

 X社は2012年の営利事業所得税(法人税)の確定申告において、1億6,000万台湾元の投資損失を損金算入しました。財政部北区国税局は、被投資事業の実際の事業欠損の証明書類が不十分として損金算入を否認し、追徴課税しました。X社は行政救済を提起し、当該投資損失は海外子会社A社の清算損失で、A社の清算を証明する書類およびA社の清算完了による振込記録を添付し、実際の投資額から清算分配金額を差し引いた額を投資損失として申告したと主張しました。

 しかし、A社はX社の100%子会社であるものの持ち株会社であり、A社はB社へ再投資をし、実質的にX社からの投資資金を運用し欠損が生じたのはB社でした。X社はA社の清算完了による分配金の計算根拠の証明ができず、またB社の実質的な事業損失の実態の証明もできませんでした。この結果、台北高等行政法院はA社の請求を棄却し、当該投資損失の損金不算入が確定しました。

3.国税局による注意喚起

 所得税法および営利所得税監査準則により、投資損失は被投資事業に実際に発生した事業欠損に限ると規定されています。減資による欠損補塡または清算により出資額が減少した場合に、投資損失が実際に発生したことになるが、投資損失は形式的な書類のみで税務上認定されるものではないと、北区国税局では注意喚起しています。

まとめ

 営利事業者が海外子会社の投資損失を損金算入する場合は、当該被投資会社の減資や清算の証明書類のみでは十分ではなく、損失計上の事実および合理性を立証するために、実質的な経営実態のある再投資先の事業欠損の実態を証明する書類を提示できるようにすることが必要です。

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