ニュース その他分野 作成日:2017年4月11日_記事番号:T00069941
台湾経済 潮流を読む駐在員と語学教師が中心
台湾政府が、高い専門性や優れたスキルを持つ外国籍人材の獲得に本腰を入れ始めた。蔡英文政権がイノベーション政策のターゲットに掲げる「5プラス2産業」の育成を図る上で、最先端の技術知識や企業家精神を持つハイテク人材の獲得は欠かせない。加えて台湾は、ホワイトカラー労働者の海外流出が流入者数を大きく上回る「頭脳純輸出国」であり、このギャップを縮める上でも、外国籍の高技能人材への期待は大きい。
現在、台湾が受け入れている外国人労働者は、製造業・建設業の現場や介護、家事労働に従事する「産業および社会福祉外国籍労働者」と、専門・技術職、外資系企業管理職、教職などを中心とする「外国人専門家」に大別される。2015年末の人数をみると、前者は約59万人、後者は約3万人と、大きなギャップがある。
15年末の「外国人専門家」の内訳を国籍別にみると、日本籍が約8,700人(29%)、米国籍が約5,400人(18%)、マレーシア籍が2,200人(7%)であった。1位の日本人の約7割は専門・技術職に就いており、外資系企業管理職がこれに次ぐ。産業別や地域別の分布からみて、その多くが日系企業の駐在員ではないかと推測される。2位の米国人の場合、4割以上を語学教師が占めており、専門・技術職、教職がこれに次ぐ。このように、現在の外国人専門職の多くは、企業内転勤で来台するビジネスパーソンや語学教師であるとみられる。
激しさ増すハイテク人材獲得競争
他方で、目を世界に転じれば、00年代以降、最先端の技術知識を持つハイテク人材の獲得をめぐる国家間競争が激しさを増している。その先鞭(せんべん)をつけたのは、90年代にアジア系を中心とする外国人エンジニア・科学者の受け入れを積極的に進めて、イノベーションの活性化に成功した米国だった。これにEU(欧州連合)諸国も続き、近年では日本や韓国もハイテク・イノベーションの担い手となる高度人材の誘致に力を入れるようになっている。
このような国家間の獲得競争の焦点になっているのは、待遇や働きがいを追求して国境を越えて活発に移動するグローバル人材だ。その多くはハイテク技術者や起業家的な科学者たちである。このような人々の行動原理や働き方は、台湾が現在受け入れている駐在員型の多くの「外国人専門家」とは異なり、その誘致に当たっては従来とは違うアプローチが必要になる。
台湾政府は昨年来、グローバルなイノベーション人材の誘致策の一環として、台湾のプロモーション活動を強化したり、税制面での優遇策を講じたり、科学技術、経済、教育等の6大分野において基準を満たす外国人については、台湾居住満5年で、原国籍を保持したまま中華民国の国籍を取得できるよう法改正を行ったりしている。
さらに、より踏み込んだ人材招致策を推進するため、「外国専門人材招致および雇用法」の立法化に向けた準備も進められている。行政院からの指示により同法の制定作業を進めている国家発展委員会によれば、この法律では、現行の受け入れ対象である「一般外国人専門家」に加えて「特定外国専門家」という枠を新たに設け、より柔軟な優遇策を講じる方針である。また、現在は雇用主の申請ベースとなっている外国人専門家の受け入れを、個人中心の仕組みに転換することも検討されている。
このような制度面の改善努力は確かに重要だ。しかし、優遇制度それ自体にハイテク人材を引き付ける力があるわけではない。米国や日本の状況をみる限り、ある国の特定の企業がグローバルな高度人材に選ばれるかどうかは、その国と彼ら・彼女らの母国の経済的社会的なつながりの深さや、その国の生活の質、企業の競争力といったさまざまな要因に依拠している。
実際、台湾積体電路製造(TSMC)をはじめとする傑出した台湾企業では、既に優れたグローバル人材が少なからず働いていると聞く。台湾も日本も、国境を越えて活躍の場を求めるイノベーティブな人材に選ばれるような傑出した実力を持つ企業と魅力的な職場をどれだけ提供できるかを問われる時代を迎えている。
川上桃子
台湾のコンサルティングファーム初のISO27001(情報セキュリティ管理の国際資格)を取得しております。情報を扱うサービスだからこそ、お客様の大切な情報を高い情報管理手法に則りお預かりいたします。
ワイズコンサルティンググループ
威志企管顧問股份有限公司
Y's consulting.co.,ltd
中華民国台北市中正区襄陽路9号8F
TEL:+886-2-2381-9711
FAX:+886-2-2381-9722