ニュース 法律 作成日:2018年4月11日_記事番号:T00076435
産業時事の法律講座ASEAN知的財産協会(ASEAN-IPA)の2018年度年次大会が4月6、7日にカンボジアの首都プノンペンで開催されました。会議の中で各国の代表者たちは、インターネット通販プラットフォーム(以下「EC」)における知的財産権の侵害が悪化の一途をたどっていることに深い関心を示し、各国政府に対して立法によるECの有効管理体制を整備するよう求めていくことで一致しました。
ECは幅広く便利なインターネット上の販売、購入プラットフォームですが、同時に地理的制約なく模倣品を大量に販売することを可能にしてしまっています。従来のような店舗での販売においては、模倣品を販売する側は、店の賃料を支払わなければならず、またそこで販売される模倣品を購入できる人数も限られていました。しかし、ECにおいては設備投資はほぼ必要なく、また顧客も地理的制限を受けることはありません。このような要素の相乗効果の結果、模倣品が加速度的に散布されることになってしまったのです。
模倣品の販売は本質的に犯罪であるため、一般社会で公然と行われることはありません。法律による犯罪の完全排除は難しいとしても、成熟した社会においては、犯罪に対するラベリングにより犯罪が社会に与える危害の範囲を制限するため、犯罪は地下に潜らざるを得ません。しかし、ECは従来の商業方式でいえばショッピングモールや百貨店のようなものであるにもかかわらず、そこでは模倣品の販売行為が公然と行われています。このような現状は、正常な社会においては、本来あってはならないものです。
対策は告発を受けてから
法律面から見れば、ECは地理的制約を受けないその特性から、以前は考えられなかった世界規模の販売網を構築でき、そこから生まれる利益も莫大なものとなるため、派生するまたは拡大する模倣品取引に関しては、本来であれば防止義務があるはずです。このような法律理論は、一般に「危険責任」と呼ばれているもので、多くの国がこの法律理論に基づいて法規制を行っており、台湾においては主に「危険な事業、活動および作業」を行う業者の法律責任が規定されています。
現在、ECにおける模倣品対策の多くは、告発を受けて取引を停止するというものですが、多くの大手ブランドはこのような対策に満足していませんし、特に中小ブランドにとっては何ら実質的な効果を生みません。中小ブランドにとっては、もともとブランド経営そのものが困難なのに、EC上で模倣品のパトロールする余裕まではないからです。
ECが有効な管理システムを構築してないことについては、通常「取引数が多過ぎて管理不可能」という言い訳がなされますが、このような言い訳をするEC業者は、なぜ他の同規模のECでは模倣品が取引されていないのかについて説明することができません。中国においては、「zero tolerance」方針を掲げている厳しいECもありますが、それでも毎年数倍の業績アップを重ねています。
プログラムで対策可能
模倣品取り締まりの経験を持つ人であれば誰でも知っていると思いますが、模倣品を販売するホームページにはある共通した特徴があり、また、特定の種類の模倣品に関しては、より専門性のある共通点があります。そのため、模倣品を販売するホームページの内容を基に、模倣品を有効的に発見するプログラムを組み上げることは困難なことではありません。例えば、「パーソナライゼーション広告」の技術は、利用者のネット利用情報から、その購入希望商品を割り出し、EC上でその広告を行うことができるのですから、同様に、販売者のネット利用情報から、販売しているものが模倣品であることを割り出すことも困難ではないはずです。
強まる整備への要望
業界からECに対して模倣品管理体制の整備を望む声は、これからもいっそう大きなものとなり、近い将来にはそれも実現することでしょう。さらに、模倣品の取り締まり以外にも、ネット上で多くの犯罪行為が行われている現状からすれば、将来はそれらの行為に対しても有効な自動化管理体制が求められていくことは間違いなく、それが新しい産業として頭角を現してくる日も近いでしょう。
もし、ECにおける管理体制が国際標準化されたならば、それを採択しないECは知的財産裁判所の裁判官から「被告人、あなたはXX網で模倣品でない物が買えると思っているんですか?」と揶揄(やゆ)されるだけでなく、国際的な貿易制裁の対象となることは間違いありません。
徐宏昇弁護士
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