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第138回 のれん償却費の損金算入要件


ニュース その他分野 作成日:2018年6月20日_記事番号:T00077684

KPMG 分かる台湾会計

第138回 のれん償却費の損金算入要件

 会計上の「のれん」とは、企業の買収・合併(M&A)の際に発生する、「企業の時価評価純資産」と「買収価額」との差額で、いわゆる経営ノウハウや事業シナジーなどの対価に当たります。今回は、企業合併に伴い発生する個別財務諸表上ののれん償却費について、税務上の取り扱いを説明します。

1. のれん償却費の税務上の問題点

 企業合併により発生したのれんは資産に計上され、税務上は適切な償却期間で償却し損金算入が可能です。しかし、当該償却費の損金算入を無条件に認めてしまうと、買収価額を不当に高くして虚偽ののれんを作り、納税義務を不適切に回避または減少させることが可能となります。そのため、のれん償却費の損金算入は、のれんに関する評価資料が不十分または不備があることを理由に当局に否認されることが多く、台湾の税務上問題となっていました。

2. のれんの認定原則および証明書類の説明

 のれんの認定については上述のように争議となることが多い状況でした。争議を回避し租税の公平性および合理性を確保するために、財政部は2018年3月30日、企業が合併または買収を行う際ののれんの認識要件および認識不可の状況、税務上の損金算入に必要となる「合併買収の合理的な商業目的」、「合併買収原価」および「識別可能資産純額の公正価値」の証明書類について通達を公表しています。

 のれんの認識要件および認識不可の状況は表の通りです。

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 また、証明書類については詳細な要求事項が明らかにされ、例えば▽合併の目的の説明▽合併の方針を決定した各種議事録▽合併先の事業の経営分析▽買収価額に関する公正第三者の専門業者による企業価値評価報告書またはデューデリジェンス(適正評価手続き、DD)レポートおよび買収価額または株式交換比率の合理性に関する意見書▽合併買収契約書▽合併先の資産負債の公正価値に関する評価資料──などが明記されています。

3. まとめ

 従来のれんの認定に関しては不明瞭な点もあり税務争議が発生しやすい状況がありました。当該財政部の通達により、のれんの認定要件や証明書類が明確にされ、のれんに関する規定はほぼ完備されました。

 のれんの評価額に関する証明書類の要求は多岐にわたるものの、従来の当局の指摘により事後的に争議に発展する実務から、事前予防を重視する実務に変わっていくと考えられます。合併などにより、のれんが発生する可能性がある場合には、その税務上の認定要件を満たすよう、事前に専門家と相談されることをお勧めいたします。

 本稿に関するお問い合わせは、以下までお願いいたします。

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