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第29回 台湾製サックスの花開け! 新鋭ブランド「トップツァオ」


ニュース その他製造 作成日:2018年12月22日_記事番号:T00081137

台湾産業ココがスゴイ

第29回 台湾製サックスの花開け! 新鋭ブランド「トップツァオ」

 先月、台中世界花卉博覧会(台中フローラ世界博覧会、台中花博)で、どこからか管楽器の落ち着いた音色が聞こえてきました。生演奏だねと同行者と話しながら歩いていると、サクソホン(サックス)演奏者が目の前に現れ、その背後にサックスのお店「TOP TSAO(トップツァオ)」が。

/date/2018/12/22/20koram3_2.jpg台湾発の国際ブランドを目指しています(YSN)

 そういえば、台中花博のメーン会場がある台中市后里区はサックスの有名な生産地で、台中花博マスコットキャラクターの「欧米馬」も得意げにサックスを吹いていましたっけ。ですが、どうして台中花博の会場にサックスのお店を出店しているのでしょうか。

看板娘のサックス教室

 質問してみようとお店に入ると、店員の女性(お姉さん)が日本語で「ちょっと吹いてみませんか?」思わずうなずくと「消毒済みです」とマウスピースを付けてくれ、サックスを持たされ、「胸を張って」と言われるがまま。突然サックス教室が始まりました。

 フーッと息を吹いてみますが、あれ、音が鳴りません。すると、お姉さんが口を一文字に広げて見せて「こうやって吹いてみて」と。まねすると「プォー」鳴りました!

 続いてお姉さんは、筆者の左右の指を「ド、レ、ミ、ファ、ソ、ラ、シ、ド」とフィンガープレート(指先を乗せるところ)にセット。小中学校の音楽の授業で吹いたリコーダーや鍵盤ハーモニカと違い、かなり腹筋を使い、痩せそう…などと考えながら、なされるがまま、言われるがままに吹いたり押さえたりするうちに、『ちょうちょう(蝶々)』を奏でることができました。

/date/2018/12/22/20image1_2.jpg日本留学経験もある曹家芸さん(トップツァオ提供)

 このお姉さん、曹家芸さんは、トップツァオ製品の専売店でレッスンも行っている先生。名刺には、トップツァオ製品を製造する承啓楽器産業(台中市后里区)の業務経理(ビジネスマネジャー)とあり、「お父さんの会社なの」。

サックスのふるさと后里

 早速、曹家芸さんに出店理由を尋ねてみると、国際イベントの台中花博を通じて、台湾製サックスの品質と優美な音色を知ってほしいと、トップツァオに込める熱い思いを語ってくれました。

 后里でサックス製造が始まったのは1954年。曹家芸さんの父、曹福伝氏は中学校を卒業後、銀春楽器工廠の張銀洲氏に弟子入りし、サックス製造の基礎を身に着けました。70年代に后里のサックス輸出は全盛期を迎え、世界の3分の1を製造する地域産業に成長しました。

 曹福伝氏は83年に独立し、当初は海外ブランドの受託生産を行っていましたが、工業技術研究院(工研院、ITRI)のブランド創設支援を受け、2005年に自社ブランド「トップツァオ」を立ち上げました。同時にトップツァオ製品の専売店も開設。まだ子供だった曹家芸さんがサックス演奏を披露したことで、「曹小妹(曹お嬢ちゃん)のお店」と報じられ、その呼び名「后里薩克斯風曹小妹産銷総部」が店名となったそうです。

職人による完全手工品

 承啓楽器産業では、曹福伝氏をはじめ、職人10人ほどがそれぞれの工程を担当し、サックスを製造しています。使用している部品は全て台湾製ですが、部品の材料となる銅は日本から、レザーはイタリアから輸入しています。職人の手作業による完全な手工品で、年間製造台数は1,000~2,000台。「后里薩克斯風曹小妹産銷総部」で販売している以外に、日本、米国、欧州、中国、韓国に輸出しています。

 アルト、ソプラノ、テノールなど各種取りそろえ、販売価格は2万~5万台湾元(約7万2,000~18万円)ほど。店舗に並んだ楽器を買う人がほとんどですが、オーダーメードも受け付けています。

/date/2018/12/22/20image3_2.jpg花博らしいサックスも(トップツァオ提供)

 トップツァオの特徴は、吹きやすく、よく共鳴すること。ブランド創設以来、初心者でも音が鳴らせると好評で、プロ奏者にも高音も低音もよく鳴ると高い評価を受けています。

音楽をもっと身近に

 曹家芸さんは3人姉妹の長女で、小学校3年生でサックスを始めました。娘らが父親に何度も、もっと簡単に鳴るようにしてとリクエストし、常に改良を重ねたので、トップツァオは細かなところまで行き届いた楽器になったと想像しています。トップツァオは値ごろなので、サックスなんて近寄りがたいと思わず、自分に合う楽器を見つけ、音楽のある暮らしを手に入れてほしいと話しています。

/date/2018/12/22/20image2_2.jpgフィンガープレートも押さえやすく改良を重ね、試奏すれば手放せないと評判(トップツァオ提供)

 曹福伝氏の口癖は、「サックスは何歳でも難しくない。手に取れば無限の楽しみが得られる」というもの。メード・イン・台湾(MIT)サックスを世界中に響かせたいと願っています。

ワイズメディア 青木樹理

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