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記事番号:T00081271
2018年12月28日15:52

 11月24日に行われた統一地方選挙で、与党民進党が惨敗し、2020年の総統選挙での政権維持に暗雲が垂れ込めた。民進党主席を引責辞任した蔡英文総統は指導力低下の兆候がみられ、頼清徳行政院長が辞任して蔡総統と距離を置くことが確実視される中、来年の同党は総統選候補をどのように選ぶかが当面の焦点となる。

/date/2018/12/28/20tsai_2.jpg政権の信頼回復に向けて、不屈の意志を示す蔡総統だが、好意的な評価は非常に少ない(中央社)

 民進党は直轄市の高雄市、台中市を失うなど、首長ポストを選挙前の13県市から半分以下の6県市に減らした。これに対し、国民党は6県市から15県市に拡大し、蔡政権の不人気を追い風に党勢を拡大した。一方、4年前に大ブームを起こした台北市長の柯文哲氏(無所属)は、再選は果たしたものの得票数を前回の85万票から58万票へと大きく減らし、人気低下が明らかとなった。地方首長選の得票率は、▽国民党、48.8%▽民進党、39.2%▽無所属、11.3%──となった。

 蔡政権は年金改革で実績を挙げたものの、脱原発政策や同性婚をはじめとした改革が民意の賛同を得られず、構造的な低賃金の改善が進まない中、批判票が国民党に投じられた。対中関係で独立色を封印した現状維持路線は、民進党支持層の政権への支持意欲を低下させた。

 台湾の近年の選挙では、少しの不満で政治家や政党を否定する傾向が強まり、実現が疑わしくとも耳に心地よい主張が支持を集めやすくなっている。高雄市の人口倍増や、南シナ海の太平島での石油採掘を主張した韓国瑜氏(国民党)、台中市の大気汚染で蔡政権を強く批判した盧秀燕氏(同)の大勝が裏付けている。

 民進党は4年前、中国への接近を強めた馬英九前政権への不満を吸収し、統一地方選で大勝、その勢いで16年総統選でも圧勝し、8年ぶりに政権を奪回したが、蔡政権のわずか2年半で有権者の信頼を失ってしまった。

住民投票で反原発修正

 統一地方選と同時に行われた10件の住民投票でも、「反原発廃止」「反同性婚」などを含む議題7件が成立し、蔡政権への施策に対する反対の意思が示された。住民投票は法的拘束力を持つため、蔡政権は25年の実現を目指していた脱原発路線の修正を余儀なくされた。

 福島原発周辺5県からの食品輸入の規制継続を求めた住民投票は77%に上る賛成率で可決。台湾の同規制は科学的根拠がないとして緩和を求めていた日本は、河野太郎外相が世界貿易機関(WTO)で紛争解決手続きを行うこともあり得る上、台湾が求めている「包括的および先進的な環太平洋パートナーシップ協定(TPP11、CPTPP)」への参加も困難になると発言した。国民党が食品輸入規制問題を政治闘争の材料とした結果、台湾全体の利益を損なった形となった。

 台湾の出場が取り消される最悪の事態もあると懸念を呼んだ「台湾の名称による東京五輪参加」は否決された。

 民進党は住民投票を民主主義の具現として推進に力を入れ、実施要件を緩和したが、10件もの議題が乱立して投開票が煩雑になった上、ポピュリズム色の強い議題が成立しやすい欠点もあらわにもなった。住民投票は再度の見直しが必須といえる。

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