第40回 イグサ帽子の故郷、苑裡のサニーラッシュ


ニュース 農林水産 2019年11月22日

台湾産業ココがスゴイ

第40回 イグサ帽子の故郷、苑裡のサニーラッシュ

記事番号:T00087016

 「父から聞いた『台湾パナマ(パナマハット)』を買いに行きたい」という友人の一言で、藺草(イグサ)の産地、苗栗県苑裡鎮を訪れました。イグサ栽培とイグサ編み職人とデザイナーを結び付け、今風のイグサ製品を送り出しているイグサ編み工房「藺子(sunnyrush、サニーラッシュ)」をご紹介します。

/date/2019/11/22/20hat7_2.jpg店頭価格1,280元(通常1,480元)とお手頃な帽子も(YSN)

編み目の美しい手工品

 台湾鉄路(台鉄)苑裡駅から徒歩4分、サニーラッシュは苑裡老街(ラオジエ、昔ながらの古い町並み)の中にあります。店内に入ると、イグサ製品がズラリ。パナマ草を使用したパナマ帽に似ていることから、台湾パナマとも呼ばれる中折れハットをはじめ、バッグや化粧ポーチ、携帯電話ケースやコースターなどなど、どれもこれも洗練されたデザインで、イグサのいい香りがします。

/date/2019/11/22/20hat6_2.jpgヘルメットの下にかぶるインナーキャップも(YSN)

 編み目の模様もさまざま。細かい編み目、ざっくりした編み目では印象がずいぶん異なります。編み目は1級、2級、3級、4級と4種類あり、細かいほど商品の値段も高くなります。

 友人が心引かれたのは、編み目が細かめで、落ち着いた風合いの帽子。Mサイズは少しきついけれど、黒いリボンのLサイズは棚にないと嘆いていると、日本語ができる店員さんが奥からLサイズを出してきてくれました。技術レベルが高かった当時の職人さんが作ったイグサ編みを使用しており、もう入手できない品。在庫があってラッキーでした。しかも編み目は2級ですが、値段は3級相当で現地価格1,980台湾元(約7,000円、通常2,200元)。「暑くて参る台湾の夏が楽しみになった」と友人は大喜び。

/date/2019/11/22/20hat8_2.jpg中折れ部分はシリコンで固定(YSN)

 店員さんによると、かぶってみて、耳の上1センチメートルのサイズがジャストフィット。相談しながら、納得できるまでゆっくり試着できる雰囲気です。それでも、ピッタリの帽子がないという方には、中のテープでサイズ調整が可能な帽子もあります。

苑裡の三角イグサ

 店内では職人さんがお客さんと交流しながら、慣れた手付きで次々とイグサ編みのデモンストレーション。難しそうとつぶやくと「あなたでも編めるわよ」。インターネットで学びながら作るDIYセット(600元)を販売している他、2階では体験教室を開催しています。

/date/2019/11/22/20hat3_2.jpg「母もイグサ編みをしていたのよ」と職人さん。左の重しは苑裡名物のレンガです(YSN)

 今は材料のイグサが足りておらず、サニーラッシュは自社でイグサ栽培を行っています。畳の材料となるイグサは断面が丸い丸イグサですが、苑裡のイグサは三角イグサ。長さ180センチメートルにも育ち、年に3回収穫できます。編める状態に整えるのも手作業なので一苦労。荒い編み目用はそのまま、細かい網目用には2~3本にすいて使います。

/date/2019/11/22/20hat4_2.jpg苑裡の三角イグサ(YSN)

砂糖・コメ・イグサ帽子

 買い物後に訪れた藺草文化館で学んだところによると、1700年代に原住民タオカス族が原生のイグサを使ってイグサ製品を作り始めたのが苑裡のイグサ産業の始まりです。日本統治時代、苑裡のイグサ編み帽子は日本人の好評を呼び、1936年の輸出量は1,600万個以上に上り、砂糖、コメに続く台湾3位の特産品となりました。「大甲帽」とも呼ばれるのは、大甲経由で出荷していたためです。

 家中でイグサ編み帽子を作り、家計を支えていましたが、70年ごろより工業化に伴い、イグサ編み産業は没落。イグサ編みの技術を擁する職人の高齢化、輸入品との低価格競争により、このままでは台湾の貴重な財産が失われると、2016年に誕生したのがサニーラッシュです。

/date/2019/11/22/20hat1_2.jpg帰りは誰もが購入した帽子をかぶって記念撮影(YSN)

 サニーラッシュは、台北駅から台鉄の自強号の直通で約2時間。台湾高速鉄路(高鉄)の苗栗駅で乗り換え、台鉄の豊富駅~竹南駅~苑裡駅という行き方でも2時間余りで到着します。台北市、台中市、苗栗県、南投県にも取扱店があります。

ワイズメディア 青木樹理

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